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エネクスレイン/enexrain


 
「エネクスレイン」へお越し頂き、ありがとうございます。長くなりますが、宜しければ、エネクスレイン/enexrainという名前の説明にお付き合い頂けると幸いです。
 
「エネクスレイン/enexrain」という名前は、「エネクス/enex」と「レイン/rain」という二つの単語をつなぎ合わせたことばです。
 
最初の「エネクス/enex」は、さらに二つの接頭語から成り立っています。最初の「en」は、物質の拡散の度合いを示す「エントロピー/entropie」を示し、後ろの「ex」は、エネルギーの質を示す「エクセルギー/exergie」を意味しています。後半の「レイン/rain」は「雨」です。明るい太陽と比べて地味な印象を受けがちなこのことばには、地球上の生命活動をつかさどる大切な「水の流れや循環」を大きく捉えたいという気持ちを託しています。
 
「エントロピー/entropie」と「エクセルギー/exergie」は、どちらも聞き慣れないことばですが、地球上の生物や自然の営みだけでなく、資源を使うことによって生み出される廃熱や廃物を環境に捨てることで私たちの生活が成り立っていることを的確に示してくれる、とても大切な概念です。言い換えると、「エネクスレイン」という名前には、「環境+資源+循環/流れ」という三つの要素が含まれていることになります。
 
普段、私たちが化石燃料などの資源を消費するとき、それをどれだけ効率よく取り入れるかということだけを優先的に考えてしまいがちですが、その消費にともなって発生するものを拭い去る自然の機能の存在や、あるいはそれを受け止める捨て場としての環境について意識することはあまりないように思います。しかし、環境を取り巻く問題の大半が、資源を使ったときに生じた行き場のない廃熱や廃物によって引き起こされているのです。
 
それに対し、地球上の生命活動をつかさどる資源は太陽から継続的に届く光です。その多くは地球に吸収されて熱に変わりますが、その熱を適度に宇宙へ捨ててくれる役割の一部を担っているのが大きな水の流れと循環です。地球に備えられた自然の大きな営みである、光や水、あるいは風の流れといった環境からの働きかけを適度に導くことのできるデザインがこれからの建築に求められているように思います。
 
そして多くの人が太陽からの光の恩恵を求めるとすれば、エネクスレインは、その明るさを陰で支えるものの視点から、発想の転換や異なる価値観を大切にし、普段は見過ごされがちなものを丁寧にくみ上げて行きたいと思っています。もしかしたらそれは、私たちの生活の中で育まれてきたにもかかわらず、技術の発展という恩恵を享受する中で失われてきた昔ながらの知恵をもう一度見直すことなのかもしれません。
 
建物に作用する光や熱といった環境からの働きかけを捉え直し、生きて行く上で本当に必要な質とは何かを追求する過程の中で、いろいろな人とのつながりを深め、そして新しい建築を提案することがエネクスレインの目標の一つです。自然界の小さな生物の営みから地球規模の環境を大きく捉えた視点に立ち、低技術だけれども知的な手法を建築に活かすことで、多くの方と面白い試みを続けて行きたいと考えています。

 
 
2012年3月4日/04.03.2012