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還流独歩

印泥 2011.03.05

ドイツの友人のために印泥(いんでい)を購入した。簡単にいえば朱肉のことで、中国ではそう呼んでいるらしい。私も頂いたものを一つ持っているが、詳しいことは良くわからないので簡単に調べてみたら、よもぎを乾燥させてつくった「艾(もぐさ)」と、硫化水銀である「朱砂(すさ)」というものに植物油を混ぜ合わせてつくられているらしい。

何日か前に、その友人からメールが来た。彼の知り合いだか誰かが、彼の名前をもじって印鑑をつくってくれたのを愛用しているのだが、肝心の朱肉の蓋を閉めるのをうっかり忘れてしまい、乾燥して使えなくなってしまったという。わざわざ写真を添付してきたメールには、もし時間があったら一つ、調達して来てくれないかと書かれていた。

こういった依頼は嬉しくもあり、その一方で、それだけのために買いに行く時間をつくることがなかなかできないので、正直なところ微妙な気持の負担になるのだが、所用で出かけた百貨店の中に書画を扱うお店があり、偶然にもそこで購入することができた。こんな風に、予想外のところでちょっとした用事を済ませることできるのは嬉しいことだ。

写真を見る限り、彼が使っていたのは簡易なもので、今回、購入したのは陶器に入った見栄えも多少良いものである。きっと喜んでくれることだろう。持ち歩く荷物は少し増えたけれど、気持がとても軽くなって帰って来た。

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