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還流独歩

国境の街と自分 2012.07.24

いくつも訪れたドイツの街の中で、同じような雰囲気を持っていると感じた都市が三つほどある。それらは「アーヘン」「パッサウ」「フライブルク」の三都市だ。いずれの都市も、人口はそれほど多くなく、有名でもないけれど、いずれも国境に近いことが共通点であり、どことなく洗練された雰囲気を持っている。

ドイツ西部の「アーヘン」は、街自体が国境に接しており、西隣りはオランダとベルギーである。「パッサウ」という街を知っている方は少ないと思うが、ドイツの南に君臨するバイエルン州の小都市であり、こちらは東隣りがオーストリアだ。環境都市として名高い「フライブルク」は、フランスとスイスまで、車で30分から1時間程の距離にある。

それらの都市に共通していることは、国境に近いということだけではない。建築的に見ると、建物に使われている色が似ていることだろうか。一つ一つの建物は古いのだが、手入れが行き届いており、その色彩も明るく豊かなのだ。パステル調というと表現が軽いが、淡い色が使われている建物が多く、垢抜けた感じさえ受ける。

国境の街というのは、どこもそんな雰囲気を持っているのだろうか。いや、必ずしも、そうとはいえない面はあると思う。でも、異文化が交錯してきた街というのは、少なからず「異なる」ということに対して寛容であり、偏見がなく、そして住む人たちの懐が深いような気がするのである。時間とともに、それらが街の雰囲気をかたちづくるのかもしれない。

では、街ではなく自分はどうだろうか。国境の街と比較することは無理だけれど、同じように考えるてみると、人間として視野を広く持ち、多くを受け入れ、そして深みのある人間として成長して来ただろうか。それは自らが判断することではなく、周囲の人が決めることだけれども、そんな気持を持ち続けられるだろうか。

エネクスレインを開設して、明日で5年を迎える一日前の今日、夏の青空が、やけに目に染みるのはなぜだろう。過去を振り返ることもときには大切かもしれないが、これからも前を見続けて進んで行きたいと思っている。できるかどうかではない。やるかやらないかである。そんな気概を、これからも持ち続けたい。

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