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還流独歩

閉店法 2009.12.06

ドイツには閉店法なるものがある。お店の休みや開店時間を自由に決めてはならないという法律である。そのためドイツでは、いまも日曜は買い物ができない。飲食店を除く商業店舗は、日曜に営業してはならないのである。目抜き通りにある有名な店舗だろうが、郊外の大型店舗だろうが、日曜は断じて休みなのだ。子供が泣いても大人が叫んでも日曜には買い物はできない。ただし、日曜でも年間に4日間だけは開店しても良いという州が多くなった。

この閉店法の規制は、ここ10年くらいの間に徐々に緩和されてきた。私が渡独する前の1996年までは、土曜の営業時間は14時までと決められていたが、同年の法改正により、土曜の営業時間は16時まで延長された。私が渡独した1998年は緩和措置の恩恵を受けて始めていたが、それでも土曜の昼まで寝てしまったときなど、午後のスーパーには野菜がまったくないということがよくあった。

土曜日も、いずれ18時まで買い物ができるようになるのではないかと思っていたら、2006年から2007年にかけて一気に20時まで緩和された。最近では20時以降の営業も認められるようになったようで、大手の百貨店などでは21時まで開店しているところもある。調べてみたら、人口の多い地域では、24時間営業も認められるようになったようだが、そんなお店はまだ見たことがない。また年に数回、深夜まで営業しても良いという日があり、12月には日曜も営業できる州がある。

そうはいっても、通常は日曜には買い物ができないことは確かだ。それが習慣になっているから、不便だとは思いつつ、受け入れるしかない。2006年の蹴球の世界選手権/サッカーのワールドカップがドイツで開催されたとき、諸外国からの人のために日曜も営業する方針が取られたが、私は開催期間中の日曜に買い物に行ったことはなかった。習慣というのは恐ろしいものである。

日曜に買い物ができないことを、不便なことこの上ないと否定的に捉えるか、あるいは逆に、買い物を他の日にすれば日曜はゆっくり休めると前向きに考えるかで、海外生活の許容範囲が大きく変わってくる。文句ばかりを言っていると、その国の嫌な面ばかりが見えてくる。むしろ嫌なことがあっても当たり前と割り切って、ほんの僅かな喜びを素直に受け入れる方が楽しい生活ができる。

いまでこそ、プリンターでコピーが取れるけれど、以前は日曜にコピーを一枚取ることさえできなかった。できないから月曜まで待つしかない。不便より便利な方が良いけれど、ちょっとした不便さというのも実は悪くはないのかもしれない。その方が時間を有効に使えたりすることもあるだろう。特に考えごとをしたりするときなどは、便利ではない環境の方が良いはずだ。

だからドイツの日曜は、買い物に行けない日ではなく、いろいろなことをゆっくりと考えることができる日ということにしておこう。でも、実際はそんな風には行かないのだけれど・・・。

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