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還流独歩

初雪が舞った日 2009.12.16

朝から灰色の雲に覆われていた空が、昼過ぎになって急に晴れて来た。予報によると、朝の最低気温は氷点下5℃で、日中も0℃前後までしか上がらないという。大寒波というには程遠いが、窓を開けると冷蔵庫のような冷気が一気に押し寄せてくる。

作業をしていると、空気中を漂うものが視界に入って来たので、ふと目を上げると雪が舞っていた。先週はドイツとベルギーを移動していたけれど、雪は降らなかったので、私に取っては今日が初雪を見た日になる。

太陽の光を浴びて空中を舞う雪は奇麗だったが、ほんの数分で消えてしまった。青空が広がっているので、どこから雪が降って来たのかわからないが、去って行った雪雲のどこからか流れて来たのだろう。

午後、気分転換に外出する。日射しがある分だけ明るいが、空気がとても冷たい。街を歩く人も、どことなく早歩きのように感じられる。外に出る前に暖房は切って行ったけれど、外出から戻ってきても暖かさは残ったままで、日射しが差込む部屋は少し冷えた身体には暑いくらいだった。

夕方前、明日が校了日の校正原稿をファクスで日本に送る。人に読んでもらう文章を書くというのは本当に難しいものである。考え抜いて書いた文章なのに、読み返すと気になる点がたくさん出てくる。もう少しすっきりした頭で校正したかったが、時間的にやむを得ない。

そのあとは、頂いたメールへの返信を書き続ける。簡単に書けるものもあれば、言葉の言い回しに気をつけなければならない丁寧な返信が求められる場合もある。色々なことを調べてから返信するにはそれなりの時間もかかる。

電子メールは便利だが、文章を書くことには違いないから、受取った相手がどう読むかを考えて送るようにしている。それにしても丁寧に書くというのは、本当に難しいものだなといつも感じる。何通か送るたびに、今日はもうこれでお終いにしようと思いつつ、時間が過ぎて行く。

明日の最低気温も今日と同じくらいで、氷点下6℃の予報だ。バルコニーに出て、冷え込んだ空気を吸うと鼻の奥が痛くなる。それと同時に、暖房の効いた部屋の温もりの有難さも身にしみる。初雪が舞った日の夜は、いつにも増してゆっくりとした時間が過ぎて行く。

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