理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

シュミーに遭遇 2009.12.27

F1レーサーのミヒャエル・シューマッハーに会ったのはいつ頃だったろうか。会ったというと大袈裟なので、すれ違ったと言う方が正しいのだが、いろんな記憶を辿ると、それはおそらく2002年くらいだった思う。ドイツで彼は「シュミー」という愛称で呼ばれているから、私もシュミーと言わせてもらおう。

ある日、買い物を終えた私が重いリュックサックを背負って近くの商店街を歩いていたら、前から背の高い男性が歩いて来る。どこかで見た顔だな、と思いつつ、近づいてくる彼がシュミーだと気がつくのに時間はかからなかった。

縦長の顔、少し突き出た顎。いや、どうみてもシュミーだ。なんでこんなところを歩いているんだ? という疑問を持ちながら視線を少し外した。そして5mくらいまで近づいたとき、もう一度確認のために彼の顔を見たら、シュミーは私に目配せをしたのである。

目配せの意味がわからない人のために補足すると、シュミーは私にウインクをしたのだ(誰でもわかるか/苦笑)。それが右目だったか左目だったかは覚えていないが、ともかくウインクをされた私は、やっぱりシュミーだと確信したのである。

よっぽど彼を追いかけてみようかと思ったけれど、その日は買い物の荷物が重かったし、私は彼の熱烈なファンでもないので、振り返ることもしなかった。心の高鳴りもないし、引き止めたところで、何を話しかければ良いかもわからない。

単純に「ファンです」と言うのも面白くないし、「いつも速いですねえ〜」といった話しかけもシビれる。「調子はどうですか」とか、「今季の抱負は」と訊くのもあり得ないだろう(笑)。「頑張って下さい」っていったところで、そんなことは本人が一番わかっていることだ。だから、彼をつかまえたところで話しかけることは何もない。

彼はケルン近郊の出身なので、ケルンの街中を歩いていても不思議ではないが、いつも買い物に行っている商店街で遭遇するとは思いもよらなかった。彼とすれ違ったあと、通りを行き交う人たちの反応を見てみたかったけれど、その後、どうなったのかは私にはわからない。いまになって思えば、少しくらい追いかけても面白かったかもしれない。

こんなことを想い出したのは、彼が2010年からF1に復帰するという知らせを聞いたからだ。しかもメルセデスへ。フェラーリにいたときも格好良かったけれど、ドイツを代表する自動車会社への返り咲きに、来季のF1が楽しみになってきた。

« »