会計の速度 2010.04.11
夕べ、某私鉄系のスーパーマーケットに立寄った。いつもドイツと比較して申し訳ないのだが、日本のレジはとても遅いと思う。何が遅いかというと、商品を機械に読み取らせるための方法と、機械の読み取り感度の両方に時間がかかり過ぎるからだ。客が持ってきたカゴの中に入っている品物を一つ一つ手に取り、それを目の前のカメラにあてがい、バーコードを読み込ませてから、隣りの空カゴに移し替えるという作業を見ていると、意外にせっかちなところがある私は気が遠くなる。
どこに行っても待たされることを避けたい人が多い日本だから、スーパーでの会計もできるだけ早く済ませたい人が大半だろう。何でも便利になって、手間のかからないことが増えたのに、なぜか食料品を扱う大型店舗のレジは、ドイツに比べると確実に遅い。会計の方法は、欧州の他の国やアメリカでもおそらく同じだと思うけれど、カゴやカートに入れた商品を自分でベルトコンベアに並べ、機械に読み取ってもらったあとは、また自分でカゴに入れる仕組みだ。隣りの客との商品の間には、仕切り棒を置けばよい。
コンベアの長さは、小規模なスーパーだと1mくらいだが、大型店舗になると、3、4mくらいにもなる。乗せられた商品は、レジ係の人がその前にあるカメラとスキャナーの前を通すと自動的に読み取られる。その作業はほとんど横流しだ。バーコードなども関係ないようで、商品にも寄るけれど、おそらく1秒で2商品くらいは読み取ることができると思う。品物が10個程度であれば、4、5秒程度で会計が済んでしまうから、商品をカゴに入れ終わる前に、レジの人から会計額を言われてしまうことも多い。
この仕組みのお陰で、スーパーでの買い物は、お金を払うときが一番忙しい。自分で並べて、自分でカゴに入れて、会計を済ませるのは慣れてしまえば簡単だが、日本のように丁寧ではない分、自分が激しく動かなくてなならない。一方、日本のスーパーは空間的な問題もあるだろうし、売り場面積をできるだけ広く確保することが優先されるから、ベルトコンベア方式を採用するのは難しいだろう。しかも、お客様を大切にし、丁寧さに心がけ、いたれり尽くせりに配慮しなくてはならない日本には、きっと馴染まない方法なのだ。
であればこそ、商品を読み取る速度と精度をもっと高めても良いと思う。空のカゴに丁寧に入れ直してくれるのはいいから、せめて1秒には1個の商品を読み取って欲しい。カメラの前にバーコードを繰り返しかざすのを見ると、カゴ一杯に買い物する人だけでなく、後ろの人もじっと待たなくてはいけない。ましてや客からの「急げ視線」を浴びつつ、「丁寧かつ迅速に」というレジの人に降り掛かる精神的な圧力は決して小さくはないように思う。
普段は日本の忙しさについて多少なりとも疑問に思っているのにもかかわらず、ときどき変なところで、もっと速くなれば良いと感じてしまうことは、自分にとっても大きな矛盾だと認識しているのだが、商品を一つ一つ丁寧に手に取りながら機械にゆっくりと読み込ませているレジの人の動きを見ると、そんなことを考えてしまうのである。
こういった仕事に関わっている皆様、勝手なことを言って申し訳ありません。でも、ドイツのレジの速さは一見の価値が(少し)はあると思いますよ。