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還流独歩

頑張る 2010.07.02

「頑張れよ」。私が本気でドイツに行くと決めた頃、友人や知人に会うたびに、「頑張ってね」とか「頑張るんだぞ」と言われた。そう言ってくれるのは有難いし、その言葉を謙虚に受け止めるべきなのだが、実はそれほど嬉しいとは思わなかった。むしろ「身体に気をつけてね」と言われる方が素直に心に響いた。

そして、頑張れと何度も言われると、そう言う当の本人はどうなのだろうか、と考えるようになった。私は誰かのためにドイツに行こうと思ったわけではないし、どのような生活が待っているかも良くわからない状況だったから、確かに頑張る必要があったのかもしれない。でもそれと同時に、私に頑張れと言う人は頑張らないのだろうか、とも思った。

その考え方は素直ではないと言われるだろう。でも、ドイツに行ってみて思ったことは、いくら頑張っても自分の力では解決できない問題がたくさんあるということだった。国が違うというが、どういったことなのかも少なからず分かった。もちろん頑張ることで道は開けることもたくさんあるけれど、うまく行かないことの方が多かったりもする。

そういう私も、以前は何の疑問も持たずに気安く「頑張れよ」と言っていたけれど、いまは自分も含めて、誰に対しても「頑張れ」とは言わなくなった。「頑張る」という言葉が悪いわけでもないし、「頑張ること」が無駄だと言うつもりは毛頭ないのだけれど、人に対して「頑張れ」と言うことは、何だか無責任な感じがするようになったのである。

頑張るのが好きな人は頑張れば良いし、頑張りたくない人は無理しなくても良いのかもしれないと最近は肩の力を抜いて考えるようにしている。

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