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還流独歩

泳ぐことは生きること 2010.09.03

何度も書いたことだけれど、私は頻繁に泳ぎに行っている。こんなことを書くと笑われるかもしれないが、泳ぐという行為は何だか人の生き方みたいだと思うようになった。別に人生の悟りを開いたわけではない。泳いでいると、腕や足を急いで動かすことが、必ずしも早く泳ぐことにつながるわけではなく、逆に水を上手くとらえ、ゆったり大きく泳ぐと意外と早かったりする。それが何となく人の生き方と似ている気がするのである。もっとも最近まで、そんなことなど思いつきもしなかったのだが、いろいろな人の泳ぎを見ていたら、何だかそんなことを考えてしまうようになった。

生きていれば、ときには懸命にばたつくことも必要かもしれない。いや、それしかできないときもあるだろう。それで思うように進まなくても、身体は確実に前に動いている。その一方で、少しコツをつかみさえすれば、あとはあまり労力を使わなくても自然と前に進んで行くことだってある。どちらが良いかと訊かれたら、おそらく後者が望ましいとは思うけれど、実際にはそうは行かないことも多い。他の人が泳いだ波に翻弄されて上手く進まないこともあるだろう。 手足がぶつかったり、水を飲んでしまって咽(む)せてしまうことだってある。

人生の荒波などど言われるが、海だと広すぎるから、人間の社会というのはコースのないプールのようなものかもしれない。同じ方向に泳ぐ人もいれば、向こうからやってくる人もいる。目の前を横切る人もいれば、後ろからついて来る人だっている。斜めに泳ぐ人、背泳ぎの人、力強いバタフライの人。みんな、好きなように泳げば良いと思う。ただ、コースが決められたら、同じ方向に泳ぐしかない。でも泳ぎ方はさまざまだ。プールで泳ぐこと、そしてどんな風に泳ぐかは、人間社会で生きることと何だか似ているのかもしれないと思うのである。

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