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還流独歩

春の移動 その2 2012.04.13

滑走路の端まで来て、そこからエンジンが全開になり、離陸するまでの秒数を試しに頭の中で数えたら、52秒くらいだった。いつものように、重そうに飛び上がった機体は、その後、千歳空港の真上を通り、稚内を抜けて、進路をシベリアに切った。いつもは新潟の上空を通過して行くのだが、今日はほぼ真北に向かって日本を縦断した。

その後の運行も順調で、少し揺れはしたものの、何の問題もない飛行だった。いつもは、ドイツに向かうときに、気分が高揚するのだが、今回は、何だか気持が沈んでいる。ドイツでの作業も多いし、日本に積み残して来たままのものも決して少なくない。それでも、こうして遥か異国の地で活動できることに感謝しよう。

荷物は程なくして出て来た。税関も問題なく通過したが、いつものように15時過ぎのICEに乗るのは、かなり厳しい状況になった。そのあと30分後にもう一本あるので、別に慌てなくても良いのだが、走れば間に合いそうな感じでもある。電車が出発する5分前に、ドイツ鉄道駅のルフトハンザのカウンターで切符を発券してもらう。

ホームに下りたら、ちょうど電車が入って来たところだった。本当は、発券された切符に書かれている16時過ぎのICEに乗らないと行けないのだが、その前の電車に乗車しても何も言われないので、最近はケルン行きが来たら、そのまま乗ることにいる。車内が混んでいるので、車両をいくつか移ると、補助用の席が一つ空いていた。

その前には大きな犬を連れた女性がいたので、訊いてみると、誰も座っていないようだ。大人しいドイツの犬に少しちょっかいを出しつつ、その間にも、ICEはアウトバーン3号線の脇を高速で抜けて行く。ドイツに戻って来て、この流れ行く景色を見ると、何だか不思議な安堵感を覚えてしまう。

いつものように、新幹線はケルン中央駅の手前で少し止ったあと、静かにホームへと入った。あいにくバスは出てしまったあとだったが、待ち時間は10分である。気温は思ったほど高くなく、街を歩いている人たちは、まだ冬の装いをしている。最高気温は10℃、最低気温は0℃くらいに日が続いているようだ。

ケルンでの活動は、わずか一週間程度だが、この街の空気を吸って、少し気持を落ち着けることができたように思う。すべてに感謝である。

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