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還流独歩

建築主の事務所視察 2012.08.08

先日、「ドイツ的片付け論な夜」について書いた。そして、ドイツの設計事務所に勤めていたときのことを想い出した。建築主から指名を受けた設計競技に参加したとき、週末に関係者が事務所を視察に来るというので、所長から事務所内を片付けておくようにとの指示があった。

私が思うに、普段でさえ奇麗な執務空間だったから、これ以上、どう片付けるべきなのかやや戸惑ったが、同僚たちはまたかというように、机の上から書類という書類を片付け去り、事務所内は出来過ぎなまでに整頓された。ただ今度は、あまりにも整然とし過ぎているので、スケッチや図面を適度にちりばめたりして、少しだけ雑な感じも残した。

日本の実情までは詳しくないが、ドイツでは、設計競技を行なう建築主が事務所の様子を見に来るということは、それほど珍しくはないはずだ。それが結果にどう反映されるのかどうかまではわからないけれど、設計の現場を実際に見に来るというのは決して悪くないことだし、むしろ互いに取って望ましいことではないかと思う。

不意の来訪者があっても、躊躇することなく見せられる空間を常に維持するためには、日頃から意識していないとできないことだ。ドイツの人は自宅を見てもらうことに抵抗のない人が多く、逆に見せたいと思っている人も少なくない。そんな環境だから、どこを訪問しても理路整然とした、透明感さえあるような空間が広がっているのだろう。

できる限り、それを見習いたいと思っている。

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