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高齢者養護施設訪問 その1 2011.11.08

標題の中の「養護」、あるいは「施設」という表現については、個人的に気になる部分がありますが、それに相応しい適切な別の日本語が思い浮かばないので、このまま使わせて頂きます。

とある経緯から、フランクフルト市内にある高齢者養護施設を訪問できる機会を得た。フランクフルトへ向かったのは、昨日月曜のことである。いつもはケルン中央駅からICE新幹線に乗るのだが、今回はライン川の反対側にあるケルン・ドイツ駅を利用することにした。フランクフルトまで、片道わずか19ユーロの割引切符の出発駅がここだったからだ。帰りも少し遅い時間の電車だと同じ金額だった。往復で38ユーロだから4,000円くらいだろうか。

乗る予定の新幹線よりも10分早く出発するミュンヘン行きのICEは、かなり混んでいて、乗降する人たちが多かったが、それが出て行ってしまったら、ほとんど人影がなくなり、私が座っている4人掛けの椅子の端に女性がいるだけになった。そしてまさかの構内放送である。「9時45分発、フランクフルト中央駅行きのICE121は運休です。ケルン中央駅まで行き、そこで乗り換えて下さい」。隣りの女性と顔を見合わせて、互いに苦笑してしまった。

「運休とは何ごとだ」と憤慨しつつも、仕方なくSバーンに乗り換えて、ライン川を渡って中央駅へ行く。その女性は、「乗る人が少ないから運休にしたんじゃない?」と冗談を言う。もしかしたら本当かもしれないと思うほど、ホームには人がいなかった。中央駅には16両編成のICEが停まっていたが、人が多過ぎて乗る気にならない。時刻表を調べたら、30分ほどあとの10時20分に、フランクフルト中央駅行きがあることがわかった。混雑を避けてそれに乗ろう。

空いているのは良いのだが、なかなか出発しない。今日は時間に余裕があるので、まったく問題ないとはいえ、電車の遅延はもう日常茶飯事であることを改めて認識した。新幹線は10分くらい遅れて出発したが、こだまのように各駅に止るので、フランクフルトまでは時間がかかる。急ぐ旅でもないので、気持を楽にして行こう。昼前に着いたフランクフルトは快晴だった。ここから一旦、植物園へ向かう。というのは「ジャパン・ウィーク」が開催されているからだ。

詳細まではわからないのだが、毎年、世界各国で、日本を紹介する催し物が開かれており、今年は、日独交流150周年ということで、ドイツのフランクフルトで開催されることになったという。前置きが長くなり過ぎたが、そこで、ある展示を行う方が、日本で高齢者介護にかかわる仕事をしている関係で、ドイツの同様の施設を視察してみたいという要望を伝えたところ、市を通じて訪問の機会が得られたという。私も非常に興味があるで同行させて頂くことにした。

場所はフランクフルト市内から数キロメートルほど北に位置している。約束の時間より、少し遅れてしまったが、女性二人が出迎えてくれた。そのうち一人は館長といえば良いのだろうか、この施設の一番上の方である。最初に、45分ほど館内を案内して頂けるという。背の高い男性は、「45分と言われているので駆け足で案内しますね」と言って、早速、いろいろな部屋を見せてくれる。普段、訪問する機会などないから、どこも興味深い。

話は少し横道に逸れるが、今回、この施設を訪れたのは、私を含めて4名である。その内の一人は通訳の女性で、私は単なる同行者なので、気持が非常に楽である。ドイツ語の案内は、私もほぼ理解できているけれども、やはり通訳の方がいるというのは本当に有難いことだ。そのドイツ語の説明と、その女性の通訳を同時に聞きながら、メモを取りつつ館内を巡って行く。アジア系の人間が館内を巡っていても、誰もが明るく声をかけてくれるのが嬉しい。

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