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プリマ・コローニアとケルシュビア その2 2011.11.26

今回、丁寧な説明をして頂いたお二人に御礼を伝え、最後にパッシブハウスの場所まで案内してもらった。朝は晴れていたのに、あいにく小雨が降って来たので、外断熱工事を行なっている現場を少しだけ視察し、地区内を後にする。今日はお昼ごはんもなしで、移動する前に各自パンを買って車内で食べるという行程になってしまったことは誠に申し訳ないのだが、どうかお許しを頂きたい。そしてまた大聖堂まで一旦戻る。

それからレンタカーを返しに行き、約束の1時間後に大聖堂脇に再び戻ることができた。今日は金曜日だし、午後から雨も降って来たということもあってか、ケルン市内はあちこちで渋滞が発生していたから、何とか予定通りの行程に合わせられたことに安堵である。そして大聖堂から歩いて今日の最終目的地であるビアホールに向かう。あとは問題なく席が見つかるかどうかだ。中に入ると、ほとんどが予約席だったが、6人掛けの一つのテーブル上に、予約は20時からと書かれているところがあった。やった!

給仕してくれる背の高い男性は、「この席は20時から予約が入っているけど、それはわかってるんだよね?」と少し強い口調で厳しく念を押して来る。「何も問題ないよ」と答えると「じゃあ全員ケルシュね」と確認してから立ち去って行った。言うまでもなく、ケルシュとはケルンの地ビールである。シュタンゲと呼ばれる円筒型の小さなグラスには、200mℓ単位でビールが注がれて、クランツと呼ばれる丸い容器に入れられて席へと運ばれて来る。

いつも思うのだが、日本の方の中には、南ドイツには詳しい人が多く、北ドイツのことを知っている方は少ないようだ。ビールも500mℓや、あるいはマースビアと呼ばれる1ℓのジョッキで飲むのがドイツ流だと思い込んでいる人たちが大勢いる。しかしそれは、ドイツのごく一面にしか過ぎない。ヴァイツェンビアを飲んだだけで、ドイツの多くを知ったかのように感じるのは仕方がない面はあるものの、それがドイツのすべてでは決してない。

ドイツは、日本と同じか、あるいはそれ以上に地方色が豊かな国の一つである。それは北ドイツとか南ドイツ、もしくは西ドイツや東ドイツといったように、大雑把な区分で明確に分けられるものではない。ドイツでも小さな地ビール会社は淘汰され、大きなところだけが生き残るという面はあるけれども、各地方には正統派のビールを提供しているところは少なくない。その中でもケルシュビアは、意外と知られている方だと思う。

話が散漫になってしまったが、ビールが好きな方は、是非、ケルンでケルシュビアを楽しんでもらいたいと思う。ケルシュを飲むことは、ケルン知ることであり、飲めば飲むほど、ケルンというつかみ所のない街のことがより見えて来る。少し大袈裟に聞こえるかもしれないが、ケルンにとっては、それくらい大切な文化の一つなのだ。ケルシュを飲みながら多くを語ろう。1杯が2杯、2杯が4杯となるにつれて、人生とは何かが見えて…来るかもしれないのである。

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