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還流独歩

基本計画書 その2 2012.03.20

私が初めて基本計画書なるものを見たときの印象は、文字が多く、ごくあたり前のことが書かれていて、しかも味気ないということだった。意匠系の基本計画書には、参考となる建築の写真や図面など、視角に訴えるものが多かったが、設備や構造は、文字や数字ばかりで、無味乾燥な表現が多かったし、それはいまも変わらないだろう。

しかし、そういった文字表記が中心の計画書であっても、設計を進める上で、極めて重要なものであることが次第にわかって来た。基本計画書というのは、最初の段階で、どういった建築をつくりあげるのかという根本的な判断基準を示す書類である。もちろん、検討事項として、保留のものも含まれるが、大枠での方向性は必要となる。

今回の物件でも、頭の中で考えるだけでは、どうしたら良いのか見えない部分があった。例えば、建築的手法による自然換気を期待するのか、あるいは大型の換気扇を複数台、設置する方が良いのかどうか。あるいは雨水利用も行ないたいが、年間で、どれくらいの雨水量が確保できるものなのかどうかが、一つ一つ明らかになり始めた。

建築の設計というのは、意匠的なデザインだけを追求するだけで完成するものではない。中には、建築に芸術的要素が強く求められる場合もあるが、多くの建築は、構造や設備などとも均衡のとれたものでなければならないと思う。そのためには、基本設計の段階で、あらゆることを検討し、それらを、できるだけ明確にすることが求められる。

基本計画書の段階で、積み残しの部分があると、それらは設計の最終段階だけでなく、現場にまでまで引きずってしまうことが多々ある。だから、いまのうちに、多くの方向性を明らかにしておこう。それは難しいけれど、建築とは、基本設計の良し悪しで決まるともいえるから、この作業を大切に捉えたいと思っている。

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