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還流独歩

来客 その2 2009.09.07

昨日、東京で再会した友人と夕方から新宿に出かけることにした。17時に事務所で待ち合わせだが、17時半を回っても来ない。メールで場所は伝えていたから、そう問題はなく来れると思ったが、やっぱり迷っていた。隣のインドカレー店から電話がかかってきたのが18時前。階段を下りて迎えに行く。私の名刺を握り締めながら、この周辺を30分以上もうろついていたらしい。

少し話をしてから新宿へ出かける。目指すは東京都庁の展望台である。西新宿の雑踏を抜けながら、夕べの余韻がまだ何となく残っているのを感じる。今夜は南棟がすでに閉鎖のため、北棟へ行く。足元には無数の照明に照らされた東京が広がっているが、展望台からの眺めは、やはり南棟からの方が良いようだ。

友人は「今夜の富士山は照明が切れているのか」という冗談を飛ばしながらも、写真を撮りながら楽しんでいる。私は夜景よりも、土産店の無秩序な配置や、置かれているものすべてのデザインが気になってしょうがない。うまく表現できないのだが、とても幼稚っぽい見えるものばかりだ。どうしてこんな風になってしまうのか理解に苦しむ。日本の観光地の縮図のようで、私には耐え切れない。

副都心の高層建築を抜けてから、煙が溢れる思い出横丁へ行く。客引きのない少し落ち着いた店の雰囲気が良く、ここで食事をする。この一体も再開発の話が持ち上がっていると聞いたことがあるが、いまある店舗が新しい巨大な商業施設の中に移ったら、まず来ることはなくなるだろう。土地が高い日本では、何でも効率と利益を最優先しがちだが、こういったところに来ると、都市の中にも等身大の空間が必要だということを実感する。

目が痛くなるようなネオンサインや看板が乱立する歌舞伎町をゆっくり抜けて行く。絶え間なく声をかけてくる客引きを丁寧に断りながら、新宿三丁目まで一回りしたときには、すでに23時を回っていたが、もう一軒、寄って行こうという話になり、軽食もできるバーに入る。さっき食べたばかりなのに、今度はパスタを注文し、男同士で分けて食べながら、麦酒と雑談がさらに進んで行く。

終電の時間が近づいてきた。急いで新宿三丁目駅に行くと、東西線の西船橋行きへの接続は最終だった。友人も途中まで一緒に行けるかと思ったが、山手線で上野まで行った方が確実だという。時間がないので、とにかく山手線に乗るように伝えて別れた。多分大丈夫だろう。帰って少ししたら、無事ホテルに着いたとスカイプで呼び出してきた。二人とも酔ったまま、互いの無事を確認して、また笑いながら一日を終えた。

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