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還流独歩

来客 その3 2009.09.09

「一緒に働きたいというオランダ人が面接に来るので、良かったら同席してくれませんか」という突然の連絡が後輩の設計事務所から来たのは8月下旬だった。オーストラリアで1年半ほど設計事務所に勤めていたが、金融危機のあおりを受けて、あえなく仕事を失ったらしい。その次の目的地を日本に定めた若い建築と会った。

彼の両親はドイツ人だが、彼が生まれる前にオランダに移住したため、オランダで生まれた彼はオランダ国籍である。オランダ語とドイツ語が話せる彼は、オランダを離れてから英語を話す機会が多かったということもあり、もちろん私のドイツ語はわかるけれども、ドイツ語だけで話すときには英語が混ざることがあって面白い。それでも会話には何にも問題は生じない。

日本での仕事が見つからず、また滞在許可も継続できないという彼が、一旦オランダに帰ると言うので、その前に会おうということになった。しかも、デルフト工科大の准教授である前出の友人がちょうど東京に来ているから、いいきっかけになるかと思い、彼も含めて事務所で待合わせした。

ハンブルク出身のドイツ人で、現在オランダの大学に勤める友人と、両親がドイツ人でオランダ生まれのオランダ人と、どっから見ても東洋系だけれど、ドイツもオランダも知っている怪しい日本人の三人が東京で会うというのは、月並みな言い方だけれど、やっぱり何だか変な感じだ。

近くの焼鳥屋に行くと、夜風が気持の良い外の席が空いていたので、そこで麦酒を飲みながら三人でいろいろなことを話した。ドイツ語とオランダ語と英語が混じりあった会話が自然と進んで行く。ここは東京なのに、ドイツとオランダが感じられる不思議な心地良い夜になった。

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