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還流独歩

電気ストーブ 2009.11.11

事務所があまりに寒いので、先週末に電気ストーブを買った。強弱の切換えもない300Wというとても小さなやつだ。もちろんエアコンはあるから、暖房運転にすれば事務所内はけっこう暖まる。でも壁の温度が低いから、断熱のないコンクリート空間の空気だけを暖めても、温熱環境的には不均一な状況になる。普段、望ましい温熱環境はどうあるべきかについて話しているにもかかわらず、実際に置かれている状況の落差は、あまりにも大き過ぎて恥ずかしい。

築40年以上にもなるRC造の無断熱の建物は、夏暑く、冬は寒い。適度な熱容量を持つコンクリート壁は、夏には蓄暖し、冬には蓄冷してくれるから、室内の暑さと寒さは、より助長されることになる。こういった空間では、どんな冷暖房方法も非効率極まりない。だから、室内全体を涼しくしたり、温かくしたりすること自体が間違いである。本末転倒な話なのだが、夏の涼しさを和らげるための建築的な工夫を進化させて来た日本古来の建築が、採暖を基本としていたことが良く理解できる気がする。

それはともかく、以前は電気ストーブというものに嫌悪感を感じていた。質の高い電気エネルギーを、一瞬にして熱に変えてしまうその過程は、熱効率だけみると100%に違いないが、非常にもったいない使い方であることは確かだ。電力は化石燃料を燃やしてつくられるのだから、「化石燃料→電力→熱」という過程よりも、「化石燃料→熱」の方が良いはずだ。もっとも、ガスや灯油の額にも製造過程での費用が含まれてはいるが、前者ほどは大きくはないはずだ。

電気ストーブに対する抵抗感というのは、いまも何となくあることは確かだが、断熱の足りない空間や建物において、投入電力の数倍近い熱エネルギーが取り出せるエアコンよりも、電気ストーブのように電力を一気に熱に変えてしまうような超局所式の暖房器であっても、こういった空間では、その方が適しているような気もしてきた。しかも電力消費量だけで考えたら電気ストーブの方が小さいはずだ。もっとも、最近のエアコンはかなり進化しているから、電気代は意外とかからないのかもしれない。

ともかく、断熱のされていない建物の冷暖房方法は、どんな手法を用いようが、根本的な解決にはならないのだなあ、と思いながら、電気ストーブを入れたり切ったりしながら寒さをしのいでいる。その方が風邪を引きにくいとしたら、電気代も節約できて、健康にも良いということになる。何だか良いような悪いような変な話になってしまった。

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