理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

環境経済学 2009.11.17

新宿の某組織事務所で行われた環境セミナーに呼んで頂く機会を得たので参加してきた。第一回目に、恩師の宿谷先生が話をされたときにも声をかけて頂いたのだが、十一回目となる今日は、一橋大学の大学院商学研究科の栗原教授の話である。標題は「環境と経済・経営をつなぐ−ホンモノの環境とは」というもので、経済学の視点から環境を捉えた講義だった。

経済学については疎いので、時折、難しい内容もあったが、全般的にわかりやすかったし、後半には水や物質の循環、そしてエントロピーの概念についても触れてくれたので、その点は私にとって身近に感じられた。ただ、聞いた内容を説明することは不可能だ(笑)。幸いにも発表内容の資料を頂いたので、それを読み返している。

そのなかでも気になる点をいくつか挙げておきたい。まず「人間は環境のために生きているわけではない」という点だ。いろいろな理解の仕方があると思うけれども、私もまさにその通りだと感じている。この指摘を肯定すると、「建築は環境のために建っているわけではない」ということになる。つまり、建築は環境を良くするために建っているわけではなく、人間を良くするために建っているべきものだ。

にもかかわらず、「環境に配慮した建築はどうあるべきか」ということがあちこちで取り沙汰されている。根底にある視点が、人間と環境の二手に分かれているわけだ。それらの方向がもともとずれているから、議論が噛み合うわけがない。そんなことを考えたり、こうして書き綴っている中で、私がずっと抱き続けて来た腑に落ちないわだかまりが緩やかに解けてきた。

だからこそ、環境に配慮する建築を求めるのではなく、まずは我々人間に配慮した建築を目指すべきだと思う。いや、そんな当たり前のことは多くの建築家や設計事務所が取り組んでいるに違いない。住宅メーカーだって、工務店だって同じだと思う。人間をないがしろにして、環境のために家を建てましょう、ということにはならないはずだ。

栗原先生からお聞きした話を、もっと紹介したいのだが、何だかこれだけで頭とお腹が一杯になった。それは私だけかな(笑)。

« »