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還流独歩

羽化の神秘 2009.12.23

夜が長くなるこの時期になると、自然界の不思議な現象が何となく気になったりする。最近、ずっと考えているのが昆虫の「羽化」である。幼虫から芋虫になって、それからさなぎになって羽化して成虫になるという過程は、私の頭では、どう考えても理解できない現象の一つだ(笑)。芋虫が、どうして奇麗な蝶へと変態できるのか、これは自然界の神秘以外の何ものでもないと思う。

さなぎの中では一体何が起きているのだろう。いや、そんなことをいうと、卵がヒヨコになる現象も同じようなことかもしれないし、受精卵から人間が形成される過程だって神秘だけれど、芋虫から蝶への変態にもまた、何か自然界の極めて不思議な摂理を感じずにはいられない。芋虫のどこがどうなって奇麗な羽ができあがるのか誰か説明して欲しい(笑)。

人間だって進化して来たけれど、蝶の成長のように、いつの間にかさなぎになって、ある日、突然大人に変身する人はいない。比喩的に、青春期を「さなぎの期間」ということは言えるかもしれないし、最近、取り沙汰されている「引きこもり」というのもさなぎのような状態なのかもしれないが(失礼)、それがある日脱皮して、それまでの形態から大きく変化した大人になることなどあり得ない。

蝶やトンボ、セミが羽化することなど、子供の頃、学校でも教わったし、その様子も一回くらいは見たことがある気もする。でも大人になるにつれて、昆虫の羽化などは当たり前のこととして、気にも留めなくなってしまう。もちろんそれは普通のことだと思うし、逆に生物学の専門家以外の人が、「私の趣味は羽化を見ることです」と言われたら少々気味が悪く感じるかもしれない。

それはともかく、羽化というのは生物の不思議な変化の中の一つに違いない。そんなことを考えるうちに、羽化する建築というのも面白いかもしれないと思った。でも、さなぎになって羽化した方が良いのは、むしろ自分かもしれないと考えたりもした(苦笑)。いや、しばらくの間さなぎになってじっとしていて、それから華麗に変身できるなら、ちょっとやってみたい気もするのだった(笑)。

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