理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

ドイツの降誕祭 2009.12.24

「ドイツのクリスマスはさぞかし奇麗なんでしょうね」と訊かれることがある。それがあてはまるのは、クリスマス市が開催される12月23日までだ。クリスマスという行事を勘違いしている人が日本にはあまりに多いので、あえて触れるが、クリスマスというのは家族と一緒に過ごす期間であって、ドイツでは、12月24日の午後から12月26日まで、公的機関、商業店舗、文化施設はほぼ完全に閉店すると考えて良い。

以前にも書いたが、私は「クリスマス」という言い方が嫌いなので、最近は「降誕祭」という日本語を使うことにしている。ちなみにドイツ語で降誕祭は「Weihnachten/ヴァイナハテン」という。クリスマスよりも響きに深みと重みがあって大変宜しい(笑)。降誕祭というのは家族と過ごす日であるから、大抵の人はその前に帰省する。つまり、12月24日から12月26日は日本でいう大晦日から正月の三が日にあたる日なのだ。

博物館も美術館も温泉も、ほとんどの施設が休みになる。最近でこそ、完全休業する日は12月25日だけというところも多くなったようだし、12月26日からはカフェや飲食店舗が開いたりしているが、ドイツでは12月25日と26日は祝日のため、降誕祭がどういうものか知らずに観光に来た人は、行くところがなくて愕然とする。入れるのは教会くらいだろう(笑)。

今日は降誕祭の前日だが、これから帰省する人も多いようで、街に出ると大きな荷物を抱えている人が目につく。立ち寄った本屋さんにはたくさんの人が並んでいる。百貨店の地下に行くと、食料品売り場にある小さなカウンターバーに人が溢れていた。みんなスパークリングワインを飲んで、ご機嫌にでき上がっている。そう、今週はもう休みなのだ。いや、来年の1/4(日)まで年末の休暇に入るのだ。

帰りがけに、商店街のお店の前の貼り紙を見ると、今日は13時閉店とか、14時閉店と書かれている。すでに今日から閉店しているところもある。人は歩いているけれど、何となく静かな雰囲気になって来た。ドイツの友人から「降誕祭のときはどうするのか」訊かれることも多いけれど、私はこの時期の静けさがとても好きである。誰にも気にされず放っておかれるのが好きなのだ。

本来の意味から大きく外れ、独自路線で展開される日本の降誕祭も悪くはないのかもしれないけれど、この時期は、どこへ行っても降誕祭一色攻めにあい、日本にいるととても疲れてしまう。特にテレビやラジオなどは、降誕祭や今年を振り返る話題以外に扱うことはないのかというくらい、しつこい内容が多い。夜が長いこの時期は、もっと静かにゆったりと過ごし、いろんなことに思いを馳せたいといつも感じるのである。

« »