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還流独歩

内燃機関 2010.01.20

先週の長距離移動で感じたのは、内燃機関が人間にもたらした影響力の大きさである。化石燃料をシリンダーの中で爆発させ、軸方向の動きを回転方向に変換し、燃料さえあれば、誰もが自由に遠くへ移動できるこの機械は、100年の間に世界を席巻したといっても良いだろう。

1850年代の後半から、我を競い合って内燃機関の進化に情熱を傾けた人たちがいたことは、自分がその場に居合わせることができないにしても、よく理解できる気がする。改良に改良を重ねる日々だったのだろう。むしろ眠れないくらいに面白く、朝から晩まで実験や研究に没頭していたに違いない。

自動車には、右ハンドルと左ハンドルの差はあれ、基本的に世界的に標準化された工業製品の一つである。私は車の専門家ではないから、もちろん車種によって違うこともあるかもしれないし、国によっても異なる部分があるかもしれないが、どの国に行っても、誰もが簡単に運転できるということは凄いことだと思う。

ある資源物理学者が書いた本に、「人間は物を運ぶ動物であり、いまは物だけでなく自分自身も運ぶようになった」というようなことが書かれていた記憶がある。蟻などのように、集団で餌を運ぶ事例もあるが、人間は国を超えて物を運んでいる。日夜、物と人間が世界中を移動しているのだ。それを支えているものの大半が内燃機関だろう。

内燃機関が、突然、世の中から消えてなくなることないと思うけれど、もし本当にそうなったらどうなるのだろう。いや、それは化石燃料の枯渇がもたらすのか、あるいは電気自動車のように、内燃機関に頼らない動力技術が、瞬く間に世界中に普及することで衰退するのかもしれない。

世界中の自動車会社が売上げと販売台数を競い合い、栄枯盛衰の中で淘汰されつつある現状を見ると、内燃機関というのは私たちの生活を根底から変えた大発明であり、何千キロメートルも簡単に移動できる手段としての車というのは、実に凄い乗り物なのだと改めて思うのである。

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