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還流独歩

片目と両目の視点 2010.02.04

最近お世話になっている某会社の方から、有難いことに夕食へのお誘いを頂いた。「誘われたら断らない」を心掛けている私は、遠慮する素振りを見せることもなく、お引き受けすることにした(苦笑)。その会社からは2名いらっしゃったのだが、一人の方はかなり以前、ドイツに1年ほど滞在された経験をお持ちだということで、食事中の話題は自然とドイツのことが中心になった。

誰しもが良く聞くように、日本を離れ、海外での生活を体験する中から、日本のことが逆に良く見えると言われることが多いが、私も同じ思いを抱いている。日本にいるときには何とも思わなかったことが、日本から出ることで、日本が持つ不思議で独特な面が意識されるし、逆に日本の良さも改めて認識できるように思う。

動物も含めて人間には二つの目がある。それは少ししか離れていないから、右の目と左の目から見える世界はほとんど変わらないけれど、見える範囲や角度には少なからず違いがある。この両目が、もし互いに遠く離れていたらどうだろう。もちろん、そんなことなど実際にはあり得ないのだが、互いに見える世界はまったく違うことになる。

「視点」という素敵な言葉があるように、同じものでも見る角度によって違って見える。海外から日本を見るということは、違う角度から見るということだ。日本にいて、日本を両目でしっかり見ることももちろん大切だけれど、片目だけでも良いから異なる方向から見つめ直すことも必要なことのように思う。

手も右手と左手があって、片手でも握るよりも、両手の方がよりしっかりと掴むことができる。ものごとを認識するのには、片方だけでなく、両面が必要であり、それが多いほどよく見えてくるのかもしれない。もっとも、たくさんあれば良いということにはならないかもしれないけれど、少ないよりは遥かに良いのではないだろうか。

日本を違う角度から見るなどと大層なことを書いたけれど、それを自分は本当にできているかなとも思う。最近は、むしろ嫌な面だけを見ているのではないかと感じるときも多い(苦笑)。それは建設的ではないし、あまり良くないことだと自分でも意識はしているのだが、気になるのだから仕方がない。

美味しい食事をご馳走になり、帰りの電車に乗りながら、そんなことを考えた。それはともかく、楽しい会話と食事を楽しむ時間を頂けたことに対し、心より感謝致します。そして、薦めて頂いた美味しい焼酎のお陰で、身体も心も温まりました。

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