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還流独歩

点字ブロック 2010.02.06

東京に戻って来たと実感するのは、点字ブロックの上を通るときである。普段、何も持たずに歩いているときには気にもならないのだが、大きなスーツケースを転がしていると、空港や駅の中には、点字ブロックが氾濫していることに気づかされる。私は点字ブロックが不要だと言いたいのではなく、その闇雲な氾濫と、画一的な形状が気に入らない。

もしかしたら、点字ブロックなど、どうでも良いと考える向きもあるかもしれないけれど、社会的に弱い立場にある人が必要とするものや使うものに対するデザイン的な配慮が欠けているように感じるのは私だけだろうか。少し調べたら、点字ブロックには歩行用と停止用の2種類があり、大きさや形状はJISで決められているそうだ。

日本工業規格で決められているものに楯突くのも甚だ失礼なのだが、黄色の板の表面に単に凹凸を施したものが溢れていて、何だかとても画一的に見えてしまうのである。

では、ドイツはどうなのかと言われると、日本のとはかなり違う。例えば、ドイツの駅にある点字ブロックは、スーツケースを転がしても衝撃が来ないのである。どういうことかというと、床の仕上げ材そのものに線上の溝が切ってあり、床面からの突起がないからだ。つまり、凸部ではなく細かな凹部で構成されているのである。

実際、その上を歩いてみると、他のところとは足触りが若干違っているのがわかる。公共的な建物では、木の床材にゴムを埋め込んだものもあるし、デッサウにあるドイツ連邦環境庁では、逆に滑らかな部材が使われている事例もある。つまり、視覚的に弱い人が方向を認識するために必要な床材は、凸部だけで構成されている必要はないということだ。

もっとも、その色については、灰色など目立たないものが多いから、その点は気になるところではあるが、日本の点字ブロックの上を歩くたび、突起だけで構成されていることに、何となく疑問を感じてしまうのである。

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