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還流独歩

客の前で煙草をふかす女 2010.02.25

今日も一連の流れです。連日、過激な標題になっております。

2000年4月から、再びケルンでの生活を始めることになった私は、2月頃から部屋探しを始めた。昨日も書いたように、そのとき住んでいたカッセルという街から電車で4時間以上もかけて4回ほどケルンへ来た。そういえばちょうど10年前のことである。

市内を移動するには地下鉄が便利だから、ケルン中央駅の地下にあるKVB/ケルン市交通局の窓口へ行き、一日券を買うことにした。二日前に紹介した、記入書類を破られた顧客センターとは別の場所である。

窓口のガラスの向こうにいる年配の女性に一日券を下さいと伝えると、派手な口紅と橙色の爆発系の髪型をしたその女性は、机に肘を突き、火をつけたばかりの煙草を上向き加減に吸い込んで、煙を長く吐き出しながら、おつりと一緒に一日券を出してくれた。

そのあと私は新聞を買い、物件情報に目を通しながら、公衆電話からめぼしいところに片っ端から電話をかけた。灰色の重い雲が垂れ込める天気の中、足が冷たくなるまで部屋探しを続けた。ケルンのでの部屋探しは本当に大変だった。それと同時に、彼女が吐き出した煙草の煙は、私の頭の中からしばらく離れなかった。

喫煙率の高いドイツは煙草に関しては寛容な国の一つだが、最近は飲食店でも禁煙になったし、煙草を吸いながら仕事をする光景は、ほとんど見られなくなったけれど、中央駅の地下にあるケルン交通局の窓口を通るたび、その女性をいまでも想い出してしまうのである。

加筆訂正:2010年3月10日(水)/2010年5月27日(木)/2010年6月10日(木)/2011年11月1日(火)/2012年11月16日(金)

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