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還流独歩

設計の根幹 2010.04.14

所用で東京に出てきた建築主と夕方から打合せをする。昨年10月から続けてきた基本設計の最終調整である。建築主との話し合いから、これまで間取りを含めた平面計画を中心に試行錯誤を続けてきたが、打合せを続ける中で、ほぼ要望に沿った案が提案できたのではないかと感じている。

住宅の基本設計に必要な期間は、建築主にも大きく左右されるし、その考え方や要望によっても異なることは確かだ。数か月で十分という方もいるかもしれないが、設計事務所に依頼した場合、通常は最低でも半年はかかると思う。あるいは1年以上の時間をかけることだって珍しくはない。もちろん長ければ良いというものではないが、短過ぎるのも問題だろう。

先日、建築主から聞いた話では、最近、家を建てた周りの友人や知人の多くが、可能なら、もう一度家を建てたいと言っているという。それは何とも残念な話だ。その原因は何なのだろうか。私がむやみに詮索しても仕方がないが、もしかしたら基本設計に十分な時間をかけないまま、気がつけば家が建っていたということなのかもしれない。

組織事務所で設計を行なっていた頃、私は基本設計の大切さを身に染みて感じたことが何度もあった。以前にも書いたかもしれないが、基本設計がしっかりさえしていれば、実施設計に入ったとしても大きな問題になることは少ないように思う。基本設計の段階で、何度も議論をすることで、建築主は次第に設計者以上に自分の家について語る土壌ができて来るの気がするのである。

世の中には数多くの設計事務所があり、どの事務所も基本設計の期間を大切にしていると思うから、いまさらそんなことに触れる程のことでもないし、むしろ当たり前過ぎて書くことさえ恥ずかしく感じられるのだが、それでもやっぱり基本設計は、求められる建築を実現するための根幹を成すものだと思う。

もっとも、そんな大層なことを言いつつ、いま関わっている他の物件も含めて、これから先もいろいろな意味で難しい状況が続いて行くのだろう。それを一つ一つ乗り越えて行けたらと思っている。

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