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還流独歩

再びバーデン・バーデン 2010.05.14

お昼過ぎ、フランクフルト空港で、ウィーンから来る日本の建築視察の方々を待つ。視察の団長は、4年ほど前に初めてドイツでお会いし、3年前の私の事務所開きにもわざわざ足を運んで頂いた方だ。今回、またドイツに来るというので、有難いことに視察同行の話を頂いた。有難い限りである。

ウィーンからの飛行機は定刻通りに到着し、久しぶりにお会いすることができた。フランクフルト市内での昼食を挟んで、20年ほど前に竣工した建築を見に行く。案内してくれるのは、この建物の建築主の一人で、設計段階から関わっているため、ほとんどすべてのことを知っているようだ。

二時間弱に亘る説明を受け、施設の概要が具体的に把握できたことはもちろんのこと、細部に渡って、良い点、あるいは改良すべき点まで詳しく知ることができた。何にも増して特筆すべきことは、この建物に入居したいという会社がとても多く、常に空きが出るのを待ってもらう状況がしばらく続いているという。

17時過ぎ、フランクフルトからバーデン・バーデンへ向かう。天気はあいにくの雨だが、渋滞もなく19時過ぎに到着。日が長くなり、食事に向かうときも外は夕暮れには程遠い。バーデン・バーデンに来たら、私の中で夕食場所はいつも同じところに行っている。ワイン居酒屋と呼べるお店に20時に前に入った。

ここの料理長は、バーデン・バーデンの中でも最高級に格付けされるブレンナースというホテルで厨房を仕切っていた方だそうで、出てくる料理はフランス料理ほどかしこまってはいないものの、このお店の雰囲気に合わせて、見栄えも適当に崩しつつ、でも味はとてもしっかりしているところが素晴らしい。

何にも増して嬉しいのが、お店の方の対応だ。いつ行っても気持ちが良い。今日はほぼ満席だったこともあって、飲み物も食事も少し待たなければならなかったが、それでも随所に心遣いが見て取れる。こんなお店では、客の方が給仕してくれる方の動きに合わせないといけないのだ。

最初から何杯か飲んだビールも、次第に白ワインへと移った。ドイツにいるのだし、ましてやバーデン・バーデンに来たのだから、この地方の白ワインを堪能するに限る。お店の方にお願いすると、一本が3,000円程度のものでも本当に美味しかった。二種類飲んだが、いずれも辛口で、何杯でも飲めそうな感じだった。

ここで一つ言いたいことがある、日本人はドイツ人の多くが甘いワインを飲んでいると思っているが、それはまったくもって間違いである。確かにドイツの白ワインは、イタリアとかフランスのに比べると甘いかもしれない。でも、日本の酒屋で売っているようなワインはドイツではまったく見かけない。

マドンナ、リープフラウエンミルヒ、シュヴァルツェカッツェだの、そんなワインが普通に出回っていると勘違いしている人がほとんどだろう。一つだけ補足すれば、甘いワインは希少価値の高い特産品というだけで、それらは、普段、ドイツ人が飲むワインではないのだ。

そんな会話を挟みつつ、バーデン・バーデンの夜は気持ち良く更けて行った。貴重な機会を頂いた皆さんと、お店のかた、そしてバーデン・バーデンのすべてに感謝である。

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