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還流独歩

摩擦とウォータースライダー 2010.06.03

昨日、ケルンを発つ前の朝、いつものようにケルン市内のプールへ泳ぎに行った。ここは天井高が15m程度あり、三段に分かれた本格的な飛込み台も備えている。5、6年前に全面改修が行われた際に、その高さを活かして、新しくウォータースライダーが設けられた。らせん階段を昇って行くと、高さ15mくらいのところに飛込み口がある。そこから先のチューブは外に配置されていて、何度も回転したあと、最後は室内の飛出し用プールに戻って来る仕組みになっている。

このプールに泳ぎに行くと、毎回、泳ぎ終わったあとに締めとして、つい滑ってしまう。そのせいかどうかはわからないが、2年ほど前に買った水着のお尻の部分を何気に見てみると、布地が薄くなっているのがわかった。水着というのは、耐用年数が意外と短く、ウォータースライダーの影響なのかどうかは別として、しばらく使っていると、いろいろなところがほころびたり、生地が弱くなってくる。単に泳ぐだけなのに、水の抵抗というのは侮れないものだ。

そこで今日は、滑るときにお尻をつけないで、腰を少し上げて滑ってみることにした。つまり、頭の上に伸ばした手と踵(かかと)の二点支持で、身体を少し弓のように反らせて滑る方法だ。そうしたら大変なことが起きた。いつもよりも滑る速度が明らかに増し、途中の連続カーブに入ったら遠心力のせいで、水が流れているところから大きくはみ出してしまったのである。摩擦で火傷をしてしまうかもしれないと思い、とっさに速度を落としたから良かったものの、そのままだったら、身体の一部がすり剥けていたかもしれない。

それにしても、この体験は驚きだった。リュージュとか、ボブスレー競技では、氷との摩擦と空気抵抗を最小限に抑えつつ、より速く滑る競技だけれども、その原理が少しだけ分かった気がする。そして、地球上には摩擦があるからこそ、人間も立って歩けるし、車も走ることができる。摩擦がなければ、建物だって崩壊し、すべてのものが地表面にしか存在できなくなるはずだ。そんなことを考えながら自宅へ戻り、出発の準備に取りかかった。

今日から東京での活動です。

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