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還流独歩

ドイツ出身の建築ジャーナリスト 2010.06.04

午後、某協会の方と打合せをしたあと、夕方、ドイツ出身の女性の建築ジャーナリストと会う。彼女はこれまで何度か日本に来たことがあるが、今年の1月から1年間の予定で、再び日本での生活を始めたそうだ。お互いの背景などを話したあと、折角なので事務所近くの和食のお店に食事に行った。

彼女は日本語もできるので、途中からは日本語とドイツ語で話した。その中で、彼女は日本とドイツとの違いについて彼女なりに感じたことを話してくれた。それはジャーナリストとして独立したことを、初めて会った人が、どのように受け止めるかということだった。

彼女の話を簡潔に書くと、ドイツの人の反応は前向きだが、日本の人は後ろ向きな感じがするということである。ドイツ人の彼女が建築ジャーナリストとして日本に滞在するということは、彼女にとって大きな経験に違いない。それを話すとドイツの人の大半が積極的に受け止めるらしい。

「建築ジャーナリストとして日本に行くなんて素敵なことね」、あるいは「いまはどんな記事を書いているの?」、「日本の建築の状況はドイツと、どう違う?」、「仕事はどうやって見つけるの?」といった積極的な質問が多いから、話が発展して行くという。

それに対して、「建築のジャーナリストとしてドイツから来ました」と日本の人に言うと、大抵の人は彼女の仕事を好意的に受け止めつつも、それに対する反応は特に大きくはなく、また怪訝な態度をされることも多いそうだ。つまり話が面白い方に展開するのではなく、それだけで終わってしまうと言う。

彼女が体験したことを、私はとてもよく理解できるが故に、この話を聞いて何だか複雑な気持ちになった。日本の人のすべてが、彼女が感じたようには捉えていないとは思うけれども、どういったらいいのだろうか、何と言うか、うまく言葉には表せない気持ちが胸の中で渦巻いたのであった。

とは言うものの、もう一軒、立寄った陽気なお店では、そんな少し後ろ向きな話よりも他の客との語らいに盛り上がった。今日も新たなつながりが生まれ、そして有意義な時間を共有させて頂いたことに感謝したい。

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