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地下資源の消費速度 その2 2010.07.24

その1からの続きです。

あるサイトによると、2002年の国民一人当たりのエネルギー消費量は、29.31×10の6乗キロカロリー、つまり29,310,000[kcal]と出ている。この数値をジュールに換算すると、1kcalは約4.19kJなので単純に4.19倍して、122,800,000[kJ]と求まる。これをギガジュールに直すと122.8[GJ]となる。

ある人から「日本人の年間のエネルギー消費は、一人当たり約123ギガジュールです」と聞かされて、それがどのくらいの値なのか想像できる人は極めて少ないに違いない。私だってさっぱりわからない。例えば「日本人一人当たりの車での移動距離は、年間で地球3周分です」などと言われたら、何となく想像できるが、ジュールだと想像もできない。

理由は熱量の単位を総量で示しているからだろう。そこで、この値を消費速度に当たるWに換算してみる。W=J/sであるから、122,800,000kJを、1000倍してJに直し、一年間の秒数である31,536,000秒(=60秒/分×60分/時間×24時間/日×365日/年)で割ればよい。そうすると、3.894×10の3乗ワットと求まる。つまり約3,900Wということになる。

消費量の数値が正しいかどうかは別として、この計算に間違いがなければ、日本人一人当たりのエネルギー消費速度は、約3.9kWである。これは日本人一人一人が、常に40Wの蛍光灯を昼夜を問わず100本照らし続けていることになる。あるいは1kWの電気ストーブを、いつも4台つけっ放しにしているのに相当する。これは大変な消費量だろう。

消費量の総数である123ギガジュールと言われても、すぐに理解できないが、それを消費速度にあたるワットに換算すると、はるかにわかりやすくなるし、身近な数値として捉えやすくなるはずだ。統計などを扱う人は、常に総量を示して説明することが多いようだが、私は消費の速度も併せて示す方が良いのではないかと思っている。

速度と言われて、私たちの身の回りにある分かりやすい例は、車の時速60kmや、新幹線の時速300kmだろう。どれくらいの速さで移動しているかは、目に見える形で体験ができるからこそ実感しやすいといえる。あるいは台風などの瞬間最大風速が秒速何メートルというのも何となく想像がつく。風は見えなくても、わかりやすい例の一つだ。

化石燃料を中心とする地下資源の消費について語るとき、その量を伝えることも大切だけれど、現実味のある速度で表すことの方が意義があることのように思われるのである。

加筆訂正:2010年7月28日(水)/2010年10月11日(月)

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