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還流独歩

縦方向で考える 2010.08.13

建築は空間づくりである。だから平面だけで考えてはいけない。良い建築と言われる建物は、縦方向の使い方や納め方が上手なのではないかと勝手に思っている。もちろん平面計画も大切だが、断面計画は、それ以上に重要だ。

家を建てようと思っている人の多くは間取りについて悩む。土地や建物の規模に制約はあるとしても、平面計画には無数の案が存在し、最初から正しい答えなどあるはずもない。行き着いた案が答えである。

その過程で大切なのが、高さや鉛直方向の視点だろう。いえづくりに関心がある一般の人が読むような住まい関連の雑誌には、平面図は載っていても、断面はあまり書かれていないようにも思う。

平面図に対して、断面図は家のある一部を縦に切り取った図だから、そこから得られる情報はやや専門的になるし、平面に比べると面白みに欠けるかもしれない。しかも断面の様子は内観写真が補完してくれることもある。

でもある空間に入ったときに得られる感覚は、平面構成もそうだが、縦方向から得られる割合も大きいはずだ。天井の高さや吹抜けなどは、たとえ断面図に書かれていたとしても、実際に体験してみないとわからない。

いまの建築は、冷暖房設備や給排水設備、電気設備などを含めて支えられている。建築的な空間にも配慮しつつ、建物内で生活するために必要な陰の機能も、やはり縦方向がきれいに納まっている建築でありたい。

平面的な明快さと同時に、構造も含めて、鉛直方向にも十分に配慮することは当然の話だが、その当たり前さにも気をつけたいと思っている。

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