丸と楕円と四角 その3 2010.08.28
その2からの続きです。
当時はカセットデッキにしろアンプにしろ、チューナーもすべてが四角いデザインが主流だった。丸いのは音量調整やチューナーの選局ダイヤルなど、回す必要のあるものだけだ。それはいまも変わらないのかもしれないが、家電製品の多くは、形状もスイッチ類もいつの間にか丸くなってきた。
私には私なりのデザイン感覚があると少し大袈裟に言わせてもらうと、その原点は、この頃に触れた四角いデザインへと遡るのではないかと思う。だから、丸みを帯びたデザインに対する私の中の抵抗感が大きいに違いない。丸いことが悪いわけではなく、私が受け入れられないだけなのだが、丸みを帯びたものとは距離を置きたくなる。
丸い形状のものでも,デザイン的に優れているものはたくさんあると思う。でも無意味な丸さが氾濫し過ぎているように感じるのは私だけだろうか。先述したように、丸は女性向けなのだろうか。それは優しいデザインで使いやすいのだろうか。女性は丸いデザインを欲しているのだろうか。特に最近の洗濯機を見るといつも疑問に感じてしまう。
私は子供の頃に触れたものは、大人になってもどこか潜在意識の中に残っているのではないかと思っている。それはデザインだけでなく、触れたときの感触や材質感であり、大きく捉えるなら五感で感じられるものすべてかもしれない。そういった経験を経て、その人なりの感覚や感性、価値観ができ上がって行く。
私は丸いデザインに問題があると言いたいわけではないし、四角ければすべて良いと考えているわけでもない。丸い形状をしていても格好の良い自動車や工業製品などはたくさんある。ただ、何となく丸にしておけば「デザイン的に丸く納まる」のではないかと思われる単純な解決方法を見ると、どうしても自分の感覚と比べてしまうのである。
自分でも保守的だと思う。もう少し世の中の変化を素直に受け入れるべきなのかもしれない。でもやっぱり自分が格好いいと思うものにこだわって行きたいし、いまも捨てずに持ち続けているラジカセを見たときに受けた衝撃を大切にして行きたい。それは私の直感的感覚にいまでも影響を与えているに違いないと思っている。
加筆訂正:2010年12月1日(水)/2011年5月2日(火)