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還流独歩

環流独歩一周年 2010.09.01

月並みな話で誰もが気がつくような話で恐縮だが、今年も3分の2が過ぎ、残り4か月になった。そして、昨年9月に、この環流独歩を書き始めてから早くも一年が過ぎた。更新が遅くなったり、抜けてしまった日もあったが、それでもほぼ欠かさずに、書き続けられたのは自分でも意外である。

僅か一年とはいえ、正直なところ、止めようと思ったことは何度もあった。というのは、書かなくても誰も困らないからだ。もちろん、読んでもらえることは嬉しいが、更新しなくても誰かに迷惑がかかるわけでもない。むしろ私のことを知らない人がこれを読むことで、あらぬ誤解を与えてしまい、それが問題になるのではないかという不安があった。

以前にも書いたが、私が自分の日々の思いを書こうと思ったのは、ある勉強会でお会いした講師が、ご自身のサイトで仕事や私的なことを冷静に分析しながら自由に語っているのを読んでからである。この方の勉強会に参加したとき、私の発言を聞いていた講師は、「こだわりがあるのは他ならぬ、あなたの方ですね」と鋭い指摘をされた。

彼は私の言動から、私の考え方や性格まで一瞬にして見抜いてしまったのである。実に的を得た指摘に、私はそのこだわりを逆に活かして行けば、それで良いのかもしれないと気づかされた。ここ数日も書き綴っているように、私にはこだわりがたくさんある。それを自分なりのことばで発信すれば良いと思うようになった。

こだわりというのは価値観の一つなのだと思う。いまの私の根底にあるものは、大学の研究室で学んだこと、設備設計者として働いていたときの視点、そして10年に亘るドイツでの生活を通じて体験した異文化の観点という三つから成り立っていると思う。だからこそ、振り返ってみれば、確かにそんな視点で書いてきたことが多いようだ。

ところでその講師は、もはや逃げも隠れもできないと言っている。私も事務所の開設とともに、このサイトを立ち上げた。もう少し建築的な情報を増やしたり、設計事務所らしい体裁にしたいと思いつつも、大きな改訂をすることなくこの夏に3年目を迎えたのだが、このウェブを公開してしまっている以上、私もどこかへ逃げ出すことはできない。

インターネット上にはたくさんの情報があり、さまざまな人がいろいろなことを自由に発信できる時代になった。私の名前で検索をすれば、少ないけれど、それなりの情報が目に留まる。私が誰で、どんな人なのかという情報を膨大な磁気情報媒体の中から消し去ることはもはや不可能である。

だからこそ臆することなく、自分の存在を素直に、そして謙虚に発信して行きたいと思っている。

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