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還流独歩

食券と券売機 2010.09.18

もうかなり前の話で恐縮なのだが、週に一回ほど、お昼ごはんを食べに行っている近くのうどん屋さんが、直接注文する方式から券売機に変えた。いわゆる食券である。日本にいた頃には取り立てて気にならなかったのだが、最近、何だかこの食券方式に抵抗を感じるようになった。でも、近くのおそば屋さんも食券を買う方式だし、他の即席早出し系のお店もでも採用している。多分、お店としては、お金の管理が一元化できるし、間違いも減らせるから便利なのだろう。しかも現金は機械のなかに入っているので、手元にあるよりも安全に違いない。最近は物騒な事件も多いから、券売機にするのも理解できなくはない。

ただ券売機というのは、何と言えば良いのだろうか、やっぱり貧相に感じられるのだ。券売機そのものは悪くはないのだが、人間味がないというか、温かみがないというか、まさに機械的なのである。しかも券売機の前に立つと、たくさんのボタンに圧倒されてしまう。そんな人は私だけだろうか。お金を入れて、ボタンを押して、食券と同時におつりが出てくるが、その小銭の出方も、ただ機械的に押し流した感じで、「ほら釣り銭だよ」と言わんばかりに滑り出てくる。例えば地下鉄の切符なら、こんなことは思わないと思う。きっと食べるという行為とつながっているのが私にとって気になるのだろう。

学生の頃は、学食で食券を買うことなど何とも思わなかったし、それ以降も、余りに気にしたことがなかったのだが、ドイツに行ってから、そういえばこの国には食券というものがないと気がついてから意識するようになった。ドイツに限らず、欧州にもないと思う。多分、アメリカも同様だろう。欧米になくて、日本にあるからといって、そのこと自体を揶揄するのは甚だ失礼だし、それも日本の文化だと許容してしまえば良いのかもしれないが、何かが足りない気がするのである。その一つは店員さんのとのコミュニケーションだと思うけれど、そんなことを特に求める必要はないような気もしてはいる。

ところで、そのうどん屋さんに競合相手ができたのである。対抗馬は某うどん屋さんの系列のお店で、店員さんに直接注文する方式を取っており、即席とはいえ目の前でつくってくれる。こちらのお店の方が多少安いということもあって、ここ数回はそちらに行っているのだが、もしどちらも同じような価格だったら、私は直接注文する方へ行くと思う。ものすごく細かなことなのだが、貧相な食券の券売機を見るのも、そこで買うのも私は好きではないのだ。多くの券売機は、デザインなどまったく考えていない。そんなことを券売機に求めるなど頭がおかしいと言われるかもしれないが、その前に立つと、もう少し格好良くつくれないものかと私は考え込んでしまう。

食券の券売機について、ここまでいう人も珍しいと思うけれど、そう感じてしまうのだから仕方がない。こうなったら、食券の券売機はともかく、切符なども含めて、ドイツと日本の券売機や自動販売機の違いを徹底比較してみようかと思うのである。

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