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還流独歩

秋の一日旅行 その1 2010.10.24

昨日の話で恐縮だが、土曜に北海道の南部を一周してきた。北海道に来ても、旅行らしいことは一切していなかったので、秋晴れの週末になると聞いて、何だか急に出かけたくなった。私は車の運転が苦痛に感じることはないし、どちらかというと休憩もせずに走る続けるのが好きだったりする。

今回は、道東自動車道の無料区間を使って帯広方面に行き、それから北海道名菓で有名な六花亭の工場がある中札内(なかさつない)へ向い、そこで美術館に立寄ったあと、襟裳岬を経由して戻るという案である。それを思いついたのは一昨日だ。北海道地図を眺めながら、どこに行こうか悩んだあげく、東へ向かうことにした。

朝7時過ぎに家を出て、まずは千歳東から夕張までの無料区間を走る。途中は霧がかかっていて、幻想的な景色が見られた。夕張から先は工事中なので、一般道に下りて占冠(しむかっぷ)へ向かう。通称、穂別街道とか石勝樹海ロードと呼ばれている道だ。田舎の道なのに交通量が多い。長いトンネルをいくつか抜けて、占冠からまた高速に乗る。

子供の頃は、険しい峠道が続く日勝峠(にっしょうとうげ)を何度も超えたことがあった。いつだったか、もう亡くなった祖母が一緒に車に乗っていたときのことである。5月の連休だというのに、日勝峠の一番高いところにあるトンネルを抜けると、我々を待っていたのは猛吹雪で前がまったく見えない季節外れの荒天だった。

幸いにもチェーンはあったが、それを固定するゴムが切れていることがわかった。猛烈な吹雪の中、私の父は凍えそうになりながら何とかしようとしたが、代わりになるものが見つからない。そのとき祖母は、着ていた着物の帯が使えるのではないかと差し出した。その帯でチェーンを固定し、我々の車は無事、峠を下り切ることができたのである。

北海道の峠は車に乗っていても遭難してしまうくらいの吹雪に襲われることがある。それから少しして、札幌から倶知安に抜ける中山峠でも、まったく身動きできない吹雪にあった。数メートル前の車も見えないくらいの大荒れの冬の峠で、車の中に何時間も閉じ込められたことは、いまもかなり鮮明な記憶として残っている。

話が横にそれたが、祖母の帯に助けられたことを想い出しながら、日高山脈を越える道東自動車道で、さらに東へ向かう。基本的には対面通行の一車線だが、途中に追越し車線があるので、皆そこで遅いトラックなどを一気に抜いてしまう。制限速度は70kmの表示があるが、遵守している車などない。

音更(おとふけ)帯広インターチェンジで下りたら、小学生の頃に住んでいた家を何だか見に行きたくなって立寄った。間違いなくここだろうと思われるところは小さな公園になっていた。小学校2年まで通った小学校の脇も通ったけれど、特に何の感慨もなかった。それから駅前を通り、市内を抜けて中札内に向かう。帯広の空はいつも広いなあ。
 
加筆訂正:2010年11月3日(水)/11月10日(水)

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