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還流独歩

パッシブハウス見学会 2010.10.29

今年の8月に見学させて頂いた日本版パッシブハウスが完成したというお知らせが来たので、お披露目会にでかけた。今日は建築関係者だけということで、たくさん来ているのかと思ったら、午前中に来た人が多かったらしく、午後の少し遅い時間に着いたときには、ほとんどの人が帰った後だった。私は関係者のほとんどを知っているので、挨拶に来たといった方が良いかもしれない。

ところで、パッシブハウスといっても、完成してしまうと、他の住宅とどこがどう違うのか、ほとんど見分けがつかないのではないかと思う。その中でも比較的わかりやすいのは窓だろう。今回の物件では、中空層が二つある高断熱ガラスが使われており、窓枠も木である。ただし、外側だけは耐候性を考慮してアルミニウムが使われている。

私は顔出しだけするつもりだったが、8月に引き続いて懇親会に誘われてしまったので、色々な情報を聞くのも良いかと思い、今回も参加させてもらうことにした。30年程前に開発された住宅団地の一角に住む建築主の話によると、周囲の家も世代交代が顕著になり、隣家は売りに出ていて、最低でも10軒は空き家になっているという。

そんな話を聞きながら、建築業界のことや、断熱、換気、快適性といったことについて意見交換を行う。ここでも何度か触れたが、温熱環境の大切さは意外と実感し難いものではないだろうか。そして、家の中が暖かいということが保証されていると、それは快適であるがゆえに、外が寒くても外出したくなるのではないかという話にもなった。

確かにドイツ人は真冬でも散歩が好きである。それは室内の暖かさと大きな関係があるかどうかはわからないが、一理あるようにも思える。恩師の宿谷先生もデンマークで数か月過ごしたときに、同じようなことを感じたという。つまり冬に散歩することが苦にならないのは、暖かい家に帰ることができるという保証の裏返しなのではないか。

日本には、少し寒いくらいの方が風邪を引かないという風潮が、まだどこかに残っている気がする。その考えは決して間違ってはいないのかもしれないが、何となく最良の答えを探すことを自ら放棄しているように感じられる。日本の独等な気候に対して、断熱だけですべてを解決することはできないけれど、何かもっと工夫があっても良いのではないだろうか。

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