理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

食器洗浄機 2010.11.19

かなり以前から日本でも食器洗浄機が普及して来ている。現在、工事が進んでいる住宅の建築主も食器洗浄機を入れることを検討したいというので、都内の某ショールームに見学に行った。そこは海外の製品を扱っている会社である。私は食器洗浄機には詳しくはないが、いろいろと調べてみると、やはり海外の製品の方が、あらゆる面で日本製よりも優れているようだ。

それはさておき、食器洗浄機を考えるとき、食事のときに使う食器の種類が問題となる。日本の食事は多様だし、小鉢に盛られるものも多いから、食卓に出される食器の数も必然的に多くなる。しかも、ご飯茶碗、味噌汁用のお椀などは、使う人が限られている場合が少なくない。つまり、ご飯茶碗や、お椀、箸などは、家族の中でも別々のものが結構あるということだ。しかも取り皿や小皿など、食器だけでもかなりの数になる。

例えば、大きいご飯茶碗はお父さんのもので、少し小さいのはお母さん専用ということもあるだろうし、子供がいれば、それぞれ好きな茶碗が決まっているということも良くある話だ。箸も各自専用のものがあったりする。何を言いたいかというと、食事のときに自分専用の茶碗を使うためには、その食器が洗ってある状態でなければならない。夕飯のときにお父さんがいるかどうかは別として、お父さんの茶碗は毎回の食事に必要なのだ。

それに対して、ドイツの人たちはどうだろう。まず食事の内容が違うから、日本ほど食器は必要ないと言って良い。軽い食事なら、パンの上にチーズやハムを載せる「板」があればそれで十分だし、サラダなどがあれば、他に必要なのは取り皿くらいだろう。ナイフやフォークだって、子供用の小さいのはあっても、それ以外は家族の中で使い分けることもない。つまり、次の食事のときに自分専用の皿がないと困るという状況にはまったくならないのである。

日本の人は清潔好きだし、食事が終わったあとの食器をそのままにするのは不衛生でもあるから、食事が終わったら、比較的すぐに洗ってしまうことが多い。しかも夕飯にお父さん専用の茶碗がないというのは許されないということも大いに関係しているに違いない。お子様も自分の箸でなければ嫌だと我が侭を言うことだって十分に考えられる。だから食器洗浄機があるお宅では、食事のあとに毎回稼働させる必要がある。

一方、食器洗浄機が広く普及しているドイツでは、食器の種類もそれほど多くないし、自分専用の皿もないから、食事が終われば、汚れを軽く流して、あとは食器洗浄機にいれるだけだ。次の食事のときに、いつも使っている愛用のナイフとフォークがまだ洗ってないから食事ができないと言って揉めることもない。皿も別の皿を出せば良いだけだ。家族が使う食器は皆同じというのは実に便利である。だから食器洗浄機を稼働させる頻度は少なくなる。

こまめ洗いが求められる日本と、おおまとめ洗いのドイツ。自分専用の食器がある日本と、誰でも同じ皿を使うドイツ。深いお椀から浅い皿まで、大小さまざまな食器がある日本と、平たい皿が多いドイツ。いまでも手洗いが多い日本と、食器洗浄機がほとんどの家庭に普及しているドイツ。どちらが良いのかは別にして、食文化の違いというのは、実にいろいろなことに関係していて、しかも奥が深いと思うのである。

加筆訂正:2010年12月17日(金)

« »