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還流独歩

復活銭湯 その1 2010.12.29

昼前の飛行機で千歳から東京に戻り、夕方から某物件の打合せを都内某所で行う。前回の議事録を確認し、2時間程、設計の方向性について協議する。今年も暮れようとしているのに、明日の昼にも打合せが控えているので、妙に落ち着かない。しばらく留守にしていたので、郵便などを整理し、打合せの資料などもまとめていると時間は瞬く間に過ぎて行く。年末というのは何かと忙(せわ)しくなる季節だが、あと三日で新年を迎えるとはとても思えない状況である。

ところで、近くにある銭湯が3か月半近い改修期間を終えて、今週の月曜から営業を再開した。それはインターネットで知ったのだが、そこに掲載されている写真を見ると、以前の典型的な銭湯の面影などまったくない。入り口の様子も大きく違うようだし、番台からフロント形式に変わったこともわかる。しかも黒を基調とした浴室内の内観も大いに気にかかるところだ。そこで実際どのようになったのかこの目で確かめようと、多少の期待を胸に久しぶりに訪れてみた。

その感想を先に述べさせてもらうと、残念ながら私が十分に納得できるような改修ではなかった。無論、奇麗になったことは素晴らしいと認めざるを得ないが、それ以外に気になる点がたくさんあり過ぎて、素直に喜べないのである。ここで否定的なことを書くのは大変に失礼だし、そんなことをしても意味がないとは思うが、この銭湯には何年もお世話になってきたし、銭湯歴も足掛け25年になるからこそ、敢えて厳しい意見を述べることを許してもらおう。

まず第一に脱衣室が小さ過ぎることを挙げたい。私が入ったときは、大学生らしき若者が7-8名近く風呂から上がったところで、ロッカーの前には人垣ができていた。改修前でも、それくらいの人が一気に入って来れば、脱衣場は確かに混雑したけれど、それでもまだ空間には余裕があったし、少なくとも人垣を避けたどこかには、空いているロッカーの一つくらいは見つかった。それにお互いに譲り合うことができる適度な距離感があった。

新しい銭湯にはそれがない。ロッカー全体の幅が狭いから、ロッカーの前に3人が立ってしまうと、その間に入り込む隙間がないのである。簡単に言うと、人と人との距離が近過ぎるのだ。銭湯の脱衣室というのは、これから銭湯に入る人と上がった人、そして風呂上がりに休む人が入り乱れるから、その三者が適度な距離を取れる必要がある。でも新しい脱衣室にはそんな空間的な余裕がない。もっと大きくできるはずなのに、そうなっていないのが非常に残念である。

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