理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

建築見本市BAU その2 2011.01.21

この見本市は、建築に関する総合展であり、二年に一度の祭典だと言っても良いのかもしれない。その規模もさることながら、わずか6日間とはいえ、市場を牽引するような大規模な企業は力の入れ具合が違う。展示内容も見応えがあるから、それを見るだけでも十分な勉強になるのではないかと私は思う。

そう言いつつも、この見本市の良さや、その充実度を具体的なことばで説明するのは難しい。美味しい食べ物や、ある建築の良さを文字だけで表現することが簡単ではないのと同じだろうか。舌や五感で感じること、あるいは空間の中に身を置いたときに得られる感覚というのは実際に体験しないとわかり得ないのかもしれない。

今回のBAUを見て感じることは、「建築にマジメ」ということだろうか。ドイツ人らしく、建築に求められることの本質を突いて来るように思われる。簡単にいうと、その場しのぎの解決方法ではなく、長期的視点に立った上で何が本当に求められることなのかに対し真面目に答えを出そうとしている。

そして、もう一つ思うことは、ここ15年以上も取り沙汰されてきた「サスティナビリティ」とか「持続可能な云々」といった、ややもすると抽象的で、使い古された表現を、そろそろ簡単なことばで置き換える必要がある。それは結局「長寿命」ということに行き着くのではないだろうか。それはいまの日本に最も欠けていることなのかもしれない。

ただ、日本の建築の文化の中で、長寿命であることが最重要課題であるかどうかはについては疑問符がつくと思う。無論、社寺建築については別の話になるのだが、我々が一般的に触れる身近な建築は、むしろその逆であったように思われる。つくっては壊しがあたり前の世界であり、ましてや都市計画さえも変化して行く社会が続いている。

そういった日本の状況において、はたして長寿命というものが、どこまで正当性を持って受け入れられるかは非常に難しい問題であり、100年建築とは言いつつも、どこかで懐疑的に思われている節は多分にあるはずだ。その根源を追求して行くと、長期に亘って構築されてきた社会基盤の違いが浮き彫りになってくる。

« »