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還流独歩

青色ボールペン 2011.02.02

書類を書くとき、日本では黒を用いることが大半だが、ドイツでは青色がかなりの頻度で使われている。普段、何かを書き留める場合や、手紙を描くときにも青色ということが多いし、署名すら黒ではなく青だということも少なくない。その影響を多分に受けてしまった私は、普段から青色のボールペンを使ってしまう。正式な書類などに記入する場合、日本では黒を用いるのが常識のようだから、そういうときまで青に固執しているわけではないが、少し太めで青色のボールペンが気に入っている。使っているのは、いずれもドイツで手に入れたものばかりだ。

同じようなボールペンを日本で探そうと思ったら、意外と見つからない。日本の文房具についてあれこれ文句を言うつもりはないが、ボールペンはいずれも細さを売りにしているところがなきにしもあらずな感じで、書き心地の良いものが少ないように思う。おそらく手帳などに細かな字で書くことを考慮してのことなのだろう。また漢字も複雑だから、太いと奇麗に書けないというものわかる。しかも水性何とかというのも確か微妙な色合いで、どれもしっくりこない。私は昔ながらのボールペンで十分だし、しかも別に細くなくても良い。

ここまで書いて思い出したことがある。そういえば万年筆のインクの色は、ほとんどの場合、青ではないだろうか。いや確かに、万年筆といえば青色が普通だと思う。日本はその昔、毛筆で書いていたから黒を使うが、ドイツや欧州はペンの歴史も長いから、その頃使われていたインクの主流が青色だったという名残なのかもしれない。少しだけ検索してみたら、日本の人でも青色にこだわっている人もいるようだ。特に万年筆に思い入れがある人は、やはりインクの色も気になるということらしい。私は万年筆を使ってはいないが、その気持ちは良くわかる気がする。

私は、青で書いたから格好良く見えるとか、日本でも青色を使うべきだとか、といったことを声高に言うつもりはない。仮に手紙を青色で書いたとしても、それが相手に対して失礼だということもないと思いたい。そこでふと思い出したように頂いた年賀状を見直してみたら、添え書きを書いてくれた方は、すべて黒を使っている。もちろん、住所や名前などは印刷されている場合が多いので黒が普通だと思うが、手書きの文字を青で書いている人は一人もいなかった。おそらく私なら、いつものように何の迷いもなく青で書くだろう。

そろそろボールペンは卒業して、万年筆に変えてみようか。それで手紙の一通でも認(したた)めてみたいものだ。インクはもちろん青。何だか大人の薫りがする。万年筆の世界も奥が深いようだから、自分に合った一本を選ぶのは難しそうだけれど、お気に入りのものが一つでも手元にあるというのは、普段の何気ない生活を少しだけでも豊かにしてくれるはずだ。それより、いまだに一本も持っていないことの方が問題のような気さえしてきた。決して気取るわけではないけれど、長年使える新しい筆記用具を探してみようかと思っている。

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