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還流独歩

自然換気 2011.02.16

建物の自然換気について、学生の頃に使っていた建築環境工学の本を久しぶりに紐解いてみた。難解な数式がいくつも並んでいるが、その当時に自分で書き込んだ数式を見直したりしていると、当時のことが蘇って来る。

換気扇などの機械を使わず、自然換気のみによる室内の換気量を簡便に導き出すには電卓があれば可能ではあるが、いくつかの仮定も頭に入れておく必要があるため、そうたやすくできるものでもない。

風圧係数や流量係数など、普段、ほとんど使うことのない数値のおさらいをする。風は気まぐれだから、風が強ければ換気は促進されるし、なければ減る。一方、風がほとんどないときでも重力(温度差)換気は行われる。

そういった三次元の風の動きを、さらにわかりやすく可視化するためには、より難解で複雑な作業が伴うのだが、それを設計に反映させた事例というのは大規模な建築を除くと極めて少ないだろう。

本来なら、風が建物に与える影響を考え、それを上手く利用するためにはどうすべきかを考慮した設計を行うのが望ましいが、ほとんどの場合はできていない。その理由は、上述した通り、風の動きは三次元で極めて複雑だからだ。

春や秋といった中間期と言われる季節に、南と北の窓を開けると、どの程度の通風が得られて、それはどのような温冷感を与えてくれるのかを具体的に示すことができれば良いのだが、それが簡単にはできないもどかしさがある。

それは意匠設計者の感覚的な裁量に、かなりの程度、委ねられて来たが、難しいシミュレーションをしなくとも、少し洗練された形で設計に反映できないものかと思う。やることはまだまだたくさんありそうだ。

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