理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

パンの中身を捨てる男 その2 2011.02.18

そういえば、フランスパンの代表であるバケットも、中の白い部分より、カリッと焼けた周りの部分の歯応えが絶妙に美味しいのだと、フランスの友人が言っていた。中身よりも外側の方が重要だという点において、ドイツとフランスのパンにも共通点があるわけだ。これが、すべてのパンにあてはまるわけではないけれど、パンは外側が命なのだ。

それに対し日本の人は、パンと言えば食パンを思い浮かべる人が多いのではないかと勝手に仮定すると、主として食べる部分は、当然ながら周囲の耳の部分ではなく、中の白いところになる。だからそこがパンとしての最重要部だと考えることは何もおかしくはない。これはドイツやフランスのパンとは明らかに違う。

食パンというのは、たくさんあるパンの種類の中でも、実は亜流なのではないのではないかと思えてきた。しかも、どうやら亜米利加からやって来たらしい。なので、ここでは食パンの存在を「亜」流ということにしておこう。少々強引だが、一度焼いて出来上がった食パンを、トースターでもう一度焼き直すというのも妙な気がして来た。

私は別にトーストを敵に回すつもりはない。軽く焼いてマーガリンやジャムを塗って食べると美味しいとは思う。食パンはドイツでも普通に売っているし、トースターだってないわけではない。トーストにして食べるのが好きな人もたくさんいるだろう。でも、あたり前の話だが、ドイツのパン屋で売っているほとんどは固いドイツパンなのだ。

ということで大雑把にまとめると、パンの外側を食べるのがドイツ人で、パンの中身を食べるのが日本人ということにしておこう。無論、それにはパンの構造が大きく影響している面があるのは確かだが、これは両国間の違いの一つだし、それは思考の方法などにも実は関係しているのではないかと、パンを食べるときについ考えてしまうのである。

« »