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還流独歩

白い車 2011.02.20

1980年代くらいだっただろうか。白い車が流行った。ソアラを筆頭に、懐かしきトヨタのマークII、チェイサー、そしてクレスタの三車がその代表格と呼ばれていた記憶がある。白が好まれる理由は、無難だとか女性受けするとか、中古車でも高く売れるなど、巷ではそんなことが噂されてたが、要はトヨタの策略に乗せられただけの話であった。

それはさておき、東京の街を歩いていると、白色のメルセデス・ベンツを良く見かける気がする。私は白が嫌いなわけではないし、人の車の色を揶揄するつもりもないが、最高級の部類に入る車の色が白というのは逆の意味で余計に目立つように思える。そもそもドイツ車に白は似合わないかもしれないし、ドイツには白い車が少ない気がするのだ。

色は人の好みが大きく分かれるものだから、どのような色を選ぶのかは個人の自由である。だから白い車が走っていても気に留めることなどない。ただ、ベンツのような高級車はそれなりに視線を浴びる車だから、日本で純白のメルセデスを見るたびに、ドイツで真っ白なベンツを見たことがあるかどうか自分の記憶を辿ってしまうのである。

ドイツの街中や郊外のアウトバーンなど、思い出してはみるものの、白いメルセデス・ベンツが走っている光景が浮かかんで来ない。そこで念のために、ミュンヘンで訪れたことのあるメルセデス・ベンツの巨大なショールームで撮った写真を見直してみたら、白のカブリオレがしっかり写っていた。こういうところには白いベンツが存在するのだ。

この現実は白いベンツをドイツで見かけたことがないという私の記憶に大きな疑問符がつくことになったのだが、実際に街角で見かけたたことがあるかどうかというと、やはりどうしても想い出せない。アウトバーンで白いベンツが走っていたら、その光景が私の脳裏のどこかにうっすらとでも残っている気がするのである。

それにしても、特に意識を働かせていないときの人間の記憶というのは実に曖昧だと思う。だから次にドイツに行ったときは、白のメルセデスを探してみよう。それと同時に、路上駐車をしている数限りない車の中で、白い車の割合を大雑把ながら把握して、日本の状況と比較してみたいと思っている。

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