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還流独歩

靴ひもを探して 2011.03.18

普段、私が履いている靴のほとんどがケルンで購入したものである。意外とデザインが良く、しかもそれほど高くないからだ。靴を頻繁に購入することはないが、いつも行くのは、近くの商店街にある靴店だ。かなり前に、そこで買った靴のひもが長過ぎて、ずっと気になっていた。縛っても、先端が地面に触れてしまうくらい長いのである。特に雨の日は、先の方から濡れてきて鬱陶しいので、靴ひもだけ買い直したいとずっと思っていた。

靴ひもくらい、どこにいてもすぐに買えそうなものなのだが、東京でもケルンでも、普段の生活で靴ひもを買うというのは、意外とできないものなのだ。夕方、買い物に出るついでに、いつもの靴店にようやく足を運んでみた。レジの脇に、かなりの靴ひもが並んでいる。自分でも探しながら、店員さんに、いま使っている靴ひもを見せて、「これよりも短いのが欲しいのだが」と伝える。一通り見て、「ないわね」という実に素っ気ない返答。

私が欲しいのは、薄茶色で、細くて、長さが90cm程度の靴ひもである。同じ細さでも黒ならある。薄茶色だと太いのしかない。何という中途半端な品揃え。ドイツでの生活もそれなりに長いから、店員の不機嫌そうにも思える対応や、品揃えの少なさには慣れているとはいえ、靴ひもくらい、もっとたくさんあっても良いのではないかという、やや諦めにも似た行き場のない小さな怒りを抱えて帰って来た。

ドイツとはそういう国なのだ。靴ひもを探す旅は、まだまだ続きそうである。

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