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還流独歩

小銭は万能 その1 2011.03.23

15年程前のことだろうか。ドイツに来る前に、この国のことを少なからず予習して来きたつもりだった。いろんな本を読んで、それなりの知識を頭に入れた。でも、現地での生活が本に書かれているのと同じようになるわけはない。日本にいる限りは想像の範囲を超えることはないし、他人が書いたことなど、あてになどならないものだ。

ただその中で、確かにその通りだと思ったのは、小銭についてである。とにかく小銭は用意しておいて損はないと書かれていた。まず大切なのは、切符の自動券売機などには、お札を入れないことだった。おつりが本当に出て来ないことがあるからだ。無人駅で寂しく立っている券売機に50マルク札など入れて、おつりが出て来なかったら大損である。

そんな経験から、券売機にお札を入れるのは、いまでも躊躇してしまったりする。あいにく小銭の持ち合わせがなく、小さい額の切符を買うときに、大きな額の札を入れると、すべて小銭で返って来る。日本のように、釣り銭が札で返ってくることなど期待してはいけない。そんなことは、ドイツではどこへ行っても、いまもあり得ない。

そもそも、お札を投入するところがない券売機だってある。ケルン交通局の券売機は、銀行のカードか小銭しか受け付けない。小銭がないので銀行のカードを入れると大抵「読み取れません」との表示が出る。仕方なく知らない人に両替をしてもらう。5ユーロ札は、相手が持ち合わせている3.5ユーロの小銭にしかならないことだってある。

当時、カード式の公衆電話が普及し始めていたが、カードと小銭の両方が使える電話は少なかった。いまは両用があるが、つい最近までは、カード専用か、小銭専用の電話のどちらかが分かれて設置されていた。そしてカード式の電話はよく壊れている。だから電話に八つ当たりしたことは何度もあるが、ドイツの電話は頑丈だから簡単に壊れたりはしない。

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