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還流独歩

春散歩とケルシュビア巡り 2011.04.09

夕べ、ケルンの日本文化会館で行われた桂離宮の写真展を見に行った。友人でベルリン在住の建築ジャーナリストが桂離宮と現代建築との関わりについて講演するというので、久しぶりに会う良い機会である。他の友人も来ていたので、彼らを交えて少し話をしたが、それぞれ用事があるということで、講演が終わったあと、すぐに解散となった。

建築ジャーナリストの彼は、家族と一緒にケルンに一泊するというので、せっかくだからもう一度会うことにした。待合せ場所は大聖堂の前である。相変わらず人が多い。大道芸人もあちこちにいる。風が少し冷たいものの、春の陽気がやって来た。旧市街を抜けて、ライン川まで散策する。

観光客の多いこの地区は、一人だと絶対に足を踏み入れないのだが、ケルンに来て頂いた方を案内する場合には、まずはこのあたりに行くことがほとんどである。ライン川沿いのカフェやレストランには、昼前だというのに、もうビールを楽しんでいる人たちがいる。彼らは時間があまりないというので、コルンバ教会へ向かう。

1時間程、一緒に散策したあと、ケルン歌劇場の前でお別れした。またそのうち会う機会があるだろう。私は地下鉄に二駅だけ乗って、買い物を済ませて帰って来た。バルコニーには春の陽射しが降り注いでいる。今日はこのあと、ベルリンから来る方にお会いする予定になっている。自宅に来てもらうので、その前に作業を片付ける。

その方と会うのは実は初めてだ。いろいろな人とのつながりを通して、会いましょうという話になった。彼がドイツに来たのは2000年、私は1998年だから、ほとんど同じ時期だし、また年齢も近いということもあって、互いの背景を話しているうちに、熱い語らいになり、それに応じてケルシュビアの量が増えて行く。

そのあとビアホールへ移動し、またケルシュ。話題は全然尽きない。春の陽気に誘われて出て来たのか、日付が変わっても街は若者で溢れている。人波を抜けて、もう一軒。ここでもケルシュ。久しぶりに会ったバーのお兄さんが、店の奢りだと言って何だかわからないお酒を出してくれた。一緒に一気飲み。

3月11日を境にして、いま我々ができることは何だろう。津波の災害や原子力発電の事故をどう受け止め、そして未来をどう描いて行くべきなのだろう。彼はベルリンが拠点で、私はどっちつかずの立場にある。でも、二人とも組織には属していない。そういう立場だからこそ、できることがあるはずだ。少し焦りにも似た気持さえある。

活動する分野は違うけれども、互いの価値観も似ているし、このつながりが何らかの活動に発展して行くかもしれない。それが何だかはわからないけれど、それぞれの立場で発信できることを見つけて行きたいと思う。気がつけば、かなりの時間が経っていた。真夜中のケルンの街を抜けて歩いて帰って来た。西海さん、是非またどこかで!

西海洋介さん/KOI KLUB

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