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還流独歩

プールの更衣室 2011.04.14

ケルンの中心部にあるアグリッパバートというプールの更衣室は男女には分かれていない。70年代や80年代に建てられた別のプールでは、男性用と女性用が別々に設置されているところが多いが、更衣室を男女別に分けていない方式は、クアハウスに代表されるような温浴施設などで採用されていることが多い。おそらく日本では、絶対にあり得ないと言い切って良いのではないだろうか。

この方式をご存知の方には説明する必要もないが、簡単にいうと、一人用の小さな更衣室がいくつも並んでいて、そこで着替えるのである。ロッカーは更衣室を出た先に用意されている。個室に入ったら鍵をかけて、着替えて、ロッカーに衣類をいれてプールへ向かう。ごくあたり前の流れなのだが、要はロッカーに行くには、その手前にある小さな更衣室を通らないといけないのである。

もちろん隣りで女性が着替えていることなどあたり前である。仕切り壁も床から20cmくらいのところまでは空いているから、屈めば足下くらいは見えるし、もしその気になれば、もっと見えてしまう可能性は大いにある。私は試したことがないので、実際、どの程度まで見えるのかまでは知らない。そういった趣味のある方にとっては大変に喜ばしいことであると思われるから、ご自身の社会的責任と引き換えに挑戦することは可能である。

ところで先日のことだが、いつものように着替えて、荷物をロッカーに入れ、そして更衣室の中に置いてあるタオルを持ってプールへ向かおうとした。その先には若い男の子が一人と、女の子が二人立っている。高校生くらいだろうか。一人用の個室が並んでいる状態だと、男女問わず、更衣室が仲間内で隣同士になる。彼らはこれから着替えをはじめるところだったようだが、私の視界に入って来たのは、上半身に何もつけていない女性の姿だった。

これまでの経験から、男女混浴のサウナや、人前で下着姿になって着替える女性たちを目にすることなど慣れている。夏の強い陽射しのもとで、上半身に何もまとわないで日光浴をしている姿も見て来た。ただ、プールの更衣室を出たところで、上半身をさらけ出している女性に遭遇するという機会が残されているとは思いもよらなかった。その横には若い男の子も立っている。この不思議な光景は、これから泳ぎに向かう私の横を瞬時に通り過ぎて行った。

またもや日本とドイツの違いを見せつけられてしまった。でも、もはや動揺するようなことではない。これも一つの経験として捉えておこう。

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