理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

春雨と海 2011.04.27

朝6時過ぎ、天窓を叩く雨の音で目が覚めた。4月に入ってから何度か降った気もするが、中旬以降は晴天に恵まれてきたから、雨はとても久しぶりのように感じられる。ただ雲もまだ高く、本降りではないので、傘をささずに泳ぎに出かける。樹々の葉は次第に大きくなり、色も濃くなって来た。緑というのは不思議なもので、雨の日により映える気がするのである。

昼前から雨足が強くなった。天気予報を見ると明日は雷雨になるらしい。暖かくなったとはいえ、気温もそれほど上がらず、少し寒く感じたので、ほんの少しだけ暖房を入れる。晴れていると作業していることがもったいなく感じるので、何かと身が入らないことも多いのだが、今日は灰色の雲に覆われているので、その方が不思議と集中できたりもするものだ。

前にも書いたけれど、以前は雨があまり好きではなかったのに、エントロピーの概念から捨てることの大切さを学んだ影響もあってか、事務所の名前に雨を入れてしまったので、天からの恵みに感謝するようになった。雨は大地にしみ込み大地を潤す。そこから取れる食物は太陽の輝きだけでは育たない。地球上の生物には、太陽と同じように水が絶対に欠かせない。

地球というのは本当に良くできていると思う。太陽からの日射をずっと受け続けても熱くなり過ぎることなく、その平均気温が15℃前後を保っているのは、大きな熱容量を持つ海があるお陰だ。地球の温度をゆっくりと調整してくれている海は生命の起源だとも言われている。そこにDNAを破壊する水を捨てることは、気が遠くなるような生命の歴史を否定することになりはしないだろうか。

生命が進化する過程で少しずつ変化して来たように、取返しのつかない大きな問題が、いつか形を変えて私たちに前に姿を現すような気がしてならないのである。

« »