ハンブルク移動記 その2 2011.05.16
私が使っているテーブル席にも予約の人が来るような気配はない。ある図面を手直ししたかったのでマウスが使える席の方が都合が良いのだが、4人掛けを1人で使うのも何となく気が引けたし、その後ろの二列席の方が落ち着けそうなのでそちらに移動した。しばらくしたら電車は自転車より少し早いくらいの速度になったり、少し速く走ったりと、妙にじれったい動きを見せながら、一応は目的地に向かって進んではいる。
ケルンを出て、2時間程したらミュンスターに着いた。そこを過ぎたら電車は前のように速度を一気に上げて快調に走り始めた。いままでの遅れを取り戻そうとしているのか、結構な速さだ。車体が左右に揺れる。遅れの原因が技術的な問題だと言っていたが、どう考えても電車に不備があったわけではなさそうである。周りは農家なのだろうか、大きな家が多く、納屋のような大きな建物の屋根に太陽光パネルを設置している家も目立つ。
にわか雨を抜けた電車はブレーメンに着いた。ミュンスターからここまでは、遠くの丘陵地帯にいくつも立ち並ぶ風力発電の風車が見えた。羽根がゆったりと回る光景を見ながら、日本のとある機関に送る手紙を書く。伝えたいことが多く、なかなかまとまらない。多分、時間にして半日くらいかかりそうな状況だ。電車の遅れは10分程度のようだ。ハンブルクの手前まで来ると、ほんの僅かな起伏があるだけで、ほぼ真っ平らである。
ここまで眠らずにきたが、一つ手前の駅に着いたら軽い眠気が襲って来た。起きるのが少し早かったから仕方がない。ハンブルク駅へ入ると、ホームの反対側にキール行きの電車が止まっているのが見えた。駅の中で写真を一枚撮り、駅からすぐの宿泊先へ向かう。まだ12時半だというのに部屋に入ることができた。天気は曇りで晴れ間も見えるが、どこからともなく小雨がばらついて来るという変な天気である。
14時過ぎ、エルベ川の再開発地区へ視察に行く。仕事で来ているので週末という感覚がなかったが、今日は日曜日なので、ハンブルクの街は静かである。大手旅行会社が組むドイツ旅行の行き先といえば、そのほとんどが、ライン川下りとロマンティック街道、ヴュルツブルク、ミュンヘン、そして白鳥城であろう。だから、一般の人で、ハンブルクやベルリンのことを知っている人は少数派だ。でも南ドイツがドイツのすべてではない。
北ドイツにある人口180万人のこの街は、ミュンヘンやケルン、あるいはベルリンとは違った魅力を持っている。人によって意見が異なるとは思うが、もし時間があって、ミュンヘンとハンブルクのどちらに行きたいかと訊かれたら、私は迷わずハンブルクと答えるだろう。ハンブルクの魅力を大いに語ることまではできないが、私はミュンヘンよりも遥かに面白いと感じている。巨大な客船やコンテナ船が入り込んで来るエルベ川の港町の懐は実に深い。
その再開発地区の名称はハーフェンシティ。ハーフェンを英語に訳すとportである。他にもharborとかmarina、あるいはdocksなども考えられるかもしれないが、ドイツ語で空港のことをフルークハーフェン/Flughafenというから、これはまさにairportと同じである。ハーフェンシティなどと名称の一部に軽い英語を使うというのは何ともいただけないが、まあ仕方がないかもしれない。
その3へ続きます。