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ハンブルク移動記 その3 2011.05.17

ともかくこのハーフェンシティは実に壮大な計画で、竣工は2025年である。その中でもヘルツォーク・ドォ・ムローンが手がける「エルベフィルハーモニー」はことばでは形容し難い建築の一つであろう。再開発地区の手前から地上を走る地下鉄U3の車内にいた男性4人が、その建物を見て「これって何だよ。すげー格好悪いよな」と言うのを聞いたときは心の中でかなり笑わせてもらった。

晴れと曇りが忙しなく交互にやって来る天気だが、日曜日ということもあって、エルベ川沿いには散策を楽しむ人が行き交う。この再開発地区だけでなく、船内を見学できる大きな客船も停泊しているし、観光船が出る桟橋へは水上バスによる河川交通網が充実しているから、エルベ川沿いを一日ですべて見て回ることはまず無理だろう。そんなハンブルクは川や水とともに生きて来た、少し垢の抜けない巨大な波止場街なのだ。

ビートルズが飛躍する前に精力的に活動したレーパーバーンには、いまもなお飾り窓として有名なヘルベルト通りがあり、そこからエルベ川に向かって坂道を降りて行くと魚市場が広がっている。魚料理に関しては、世界で日本に勝るものはないと個人的に感じてはいるが、それなりの楽しみ方ができる食文化がここにはある。北ドイツで最も活気のある商業都市であり、海を通して世界とつながっているハンブルクは居心地が良い。

話の流れが完全にずれてしまっているが、ともかく軽い表現をさせて頂けるなら、ハンブルクは実に魅力的な街なのである。個人的には、ミュンヘンなど足下にも及ばないし、ケルンもまったくかなわない。ちなみに、ミュンヘンとケルンのどちらが素敵かと訊かれたら、私はミュンヘンだと答えるだろう。はっきり言ってケルンはまったく洗練されていない。でも、ケルンにはケルンなりの良さもあるのだ。

最後はハンブルクの魅力を存分に語ってから締めようと思ったのに、完全に方向を外してしまった。ともかく、ドイツへの旅行を考えているのなら、ミュンヘンよりもハンブルクをお勧めしたいと私は思っている。ただし、その独特の雰囲気が好きではない人もいるだろうから、最初に訪れる都市として無難なのはミュンヘンのようにも思う。ハンブルクというのは、実は少し旅慣れた人が面白味を感じるところなのかもしれない。

どんな旅行案内書を見ても、南ドイツと北ドイツを比較すると、前者の方の解説が充実しているし、いろいろな情報も多いように思う。だからといって、南ドイツの方が面白いかというと決してそうではない。日本の魅力が東京や京都、あるいは他の有名な都市だけではないのと同じように、あまり知られてはいないけれども、実は意外と奥の深いところがたくさんある。ハンブルクもその中の一つなのだ。

そういえば、私が個人的にお勧めするドイツ旅行案内というものをまったくしたことがないので、いずれ紹介したいと思う。第一、ケルンという街の面白さをいまだ何も紹介していないのに、なぜだかハンブルクについて、こんなに熱く語ってしまったというのは大きな間違いだ。別にハンブルクから感謝されるわけでもないが、ともかく南ドイツと同じか、それ以上もの歴史と魅力を携えた街は他にもたくさんあるということを強く主張したいのである。

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