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還流独歩

雨の奥多摩 2011.05.28

雨の奥多摩に出かけた。これまでずっとお世話になっている方が、檜原(ひのはら)村に工場を建設し、今日はその落成式に出席するためである。武蔵五日市まで、それなりの距離がある。中央線に乗るのも久しぶりだ。東京の西側には滅多に来ないから、立川から先が、どのようになっているのか、正直なところ良く思い出せない。ともかく拝島(はいじま)まで来た。そこから五日市線に乗換である。

東京都には意外と森がたくさんあり、その総面積の4割が森林である。そのうちの7割近くが西部の奥多摩に集中している。いま、この森をどのように利用するかが大きな課題となっている。一般に、森の木を伐採することは自然を破壊することだと思われている傾向が強いようだが、実際にはまったく逆で、木というのは植林して、ある程度、成長したら、切って使うものなのである。

もう何十年も前から日本中で言われていることだが、森を管理する人が少なくなり、森林の荒廃があちこちで指摘されている。しかも、間伐材というと、その名称のせいか、一般の人になかなか使ってもらえないと耳にすることも多い。その一方で、森その流れは徐々にだが、大きく変わりつつあるようにも感じられる。私も何か少しでも、それに関わることができないかと思っている。

何年か前、ドイツの木造建築を紹介させてもらう機会を頂いたとき、最後に木が持つ素晴らしさを、次のようにまとめたことがあった。まず、森林は太陽と地球からの贈り物である。そして木と言う材料は加工がしやすく、しかも長寿命で、再利用することもできるし、あるいは使い捨てをしたとしても、自然の循環に逆らわない素材の一つだ。地域経済を循環させることで、新たな木と建築文化が創造できる。

雨に煙る奥多摩の山々を見ながら、そんなことを想い出し、そして木の大切さについて改めて考えた。育てて切って使う。地球の営みに逆らわない木材の良さをもっと見直して行きたいと思っている。

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